海にそんな人なんてたくさんいるのに。 あの人がいるはずないのにね。 バカみたい。
夕日が沈む瞬間を、 海から見るのが好きだった。
人がいなくなり波の音だけが静かに鳴り響 くなかでゆっくりと沈む夕日。
今日もまた楽しい一日が終わった!!
…と充実感を得ることができる。
夕日が沈む瞬間を見るために
夕方まで遊んだりした。
夏休みはほぼ毎日海で過ごしたため、 肌が焼け水着の跡がくっきりと残ってい る。
ヒリヒリとした肌の痛みがとれないまま 高校生活最後の夏休みは終わった。
━高校三年生 2 学期 九月後半
夏と秋の ちょうど真ん中あたり。
少しだけ 肌寒くなってきた風。
夏休みに日焼けした肌も次第にもとの色に 戻ってきた。
この日も学校で授業を終え、 ??と一緒に玄関を出たその時…
「あの白い車、優さんじゃない!?」 ??がおもむろに校門の前に止まっていた白
い車を指さす。
スモークガラス、 車体が低く音がうるさいのが特徴のあの 車。
多分…いや絶対に優だ。
白い車は二人に向かってクラクションを 二回鳴らす。
疑問は確かなものへと変わった。
「やっぱり?行こう!」 ??と美嘉がその車のほうへ走り寄ると、
助手席の窓が開いた。
「よ~遊ぼうぜ!」
窓から顔を覗かせる ??ちゃん。
それと同時に優が運転席から降り、 ポケットから出した煙草に火を着けた。
「制服初めて見たわ。お兄さん悪いことし てる気分やし!」
優は煙草をくわえたまま後ろのドアを開 け、 美嘉と??はそのまま車に乗り込んだ。
煙草の火を消し 車へと戻る優。
「いきなり来てビックリしたやろ?」 優からの問い掛けに興奮気味に答える美
嘉。
「超びっくりした!!」
「つーか何する?」
??ちゃんは cd を入れながら再生ボタンを 押す。
「??ちゃんか優さんの家に行きたい~?」 ??が助手席の椅子を両手で揺らした。
「俺んち実家だしな~」
??ちゃんは助けを求めて優の顔を見る。
「俺一人暮らしやし、来てええよ!」 意見は一致して、
優の家へ向かうことになった。
車がとまった場所は 茶色い九階建てのマンション。
大学生の一人暮らしって木造で虫が出そう なボロボロのアパートを想像していたの に…。
車を降りてエレベータに乗り部屋へと向か い、
到着したのは七階の部屋だ。
「勝手に入っとって。俺飲み物とか買うて 来るから!」
優はそう言い残し部屋を出て行った。
「おじゃましま~す!」 広いワンルーム。
七階なだけあって見晴らしの良い景色。 大きくて低いベッドに、テレビや md コン ポ。
コンクリートの壁にはギターが立て掛けて あり、洋楽の楽譜が貼ってあって床のとこ ろどころに服が散らばっている。
オシャレでいかにも
“年上の男の部屋”と言う感じだ。
「ね。優さんいないことだしアレ探さな い?アレ!」
いたずらっ子のような顔で呟く??。
「うん!!」
??の言葉を すぐに理解した。
??の言うアレとは…
“hな本やビデオ”
普通男の部屋には必ず一つはあるはずじゃ ん!!きっとあるよ。
ベッドの下や本棚などをくまなく探したが いっこうに見つかる気配はない。
「「無いぃ~…」」 二人が肩を落としながら残念そうにしてる
と、 ??ちゃんは笑いながら言った。
「あいつそーゆーのにあんまり興味ないか ら無いと思うぞ~」
ちょうどその時玄関のドアが開く音が聞こ え、 美嘉と??は何事もなかったように正座をす る。
両手にビニール袋を持つ優は何か怪しげな 雰囲気に気付いた様子。
「なんで正座しとんねん!もしかして俺の 悪口でも言っとったかぁ?」
美嘉と??は 顔を見合わせて微笑む。
「まっさかぁ!今優さんのこと誉めてたん で~す。ね、美嘉!」
「そうそう優さんていい男だよね~って言 ってたんだもーん????」
二人の行動を知ってる??ちゃんは笑ってい る。
「ほんまか?確実に嘘やろ!まぁえーか!」
「お酒買って来たんですか~?さっそく飲 みましょう?」
??が話を変えてお酒を手に取り、 一人一缶を持って乾杯をした。
??と優は飲む飲む。
もともとお酒が弱い美嘉はちびちびと飲ん だ。
こんな時、 お酒が弱い自分をほんの少し恨んでしま う。
??ちゃんも意外と弱いらしく、 飲み始めてからすぐに顔を真っ赤にしてい た。
四人のテンションが 最高潮になる。
「ってか~みんな未成年なのにお酒なんて 飲んだらいけないの~っ?」
ほろ酔い気味の美嘉。
「俺もう 20 歳らよ~!」 ??ちゃんはかなり酔っているみたいで、
ろれつが回っていない。
「あたしも~まだ~未成年~?」 お酒の強い??も、
6 缶も飲めば酔ってしまったみたいだ。
「俺やってもう二十歳になったで!」 優はまだまだ
余裕がある。
「ってかぁ~告白されるならどんなシチュ エーションがいい~!?」
??が??ちゃんの肩にもたれかかって聞い た。
「俺はぁ~呼び出しとかされたら嬉しいか もな~~優は~?」
「俺?俺はやっぱ直球がええな~!」 二人とも
意外とまじめな答え。
「じゃあ~美嘉は?!」 ??から突然話しをふられまさか自分に回っ
て来るとは思わず何も考えていなかった美 嘉は、 思いついたことを適当に言うことにした。
「んとね~プレゼントにたくさんのかすみ 草を貰った後、大きい声で叫んで告白され た~い!!」
かすみ草は大好きな花。 でも大きい声で叫んで告白されたいって…
それは言い過ぎたかなぁ。
そんな告白する人はなかなかいないよね。 言ってしまってから後悔…しかし後の祭り
だ。
「なんでかすみ草!?」 ??ちゃんの問いに美嘉は立ち上がって答え
る。
「だってかすみ草ってかわいいじゃんっ?
白くて小さく!!これっくらい欲しい~!!」
大袈裟に 両手で丸を作った。
「え~そんな告白する人なんて絶対ナルシ ストだよぉ!あたしはパス!」
両手でバツを作る??。
「男が花屋で花束買うってなかなか恥ずか しいもんやで。な???。」
??ちゃんに 同意を求める優。
「シャイな俺には到底無理だな~!」 予想通り
ブーイングの嵐だ。
でもいいんだ~。 思いついたことを適当に言っただけだも
ん。
しばらく飲み続け、 カクテルを一気飲みした瞬間に意識を無く した。
意識を無くすまで飲んだのは今日が初め て。
嫌な初体験…。
頭がくらくらして、 目の前は真っ白だ。
「う~ん………」
目が覚めた時、 窓の外はもう真っ暗だった。
状況がわからないままカバンの中から携帯 電話を取り出す。
時計を見ればもう pm11 時。
「……やばっ~」 一人ごとを呟きながら、かけられていた布
団をよけてガバッと起き上がった時に気付 いた。
見慣れない部屋。 あ…そう言えば優さんの部屋で四人で飲ん
でたんだ。
やっとのことで 状況を把握。
部屋の中には 誰一人いない。
「??~?優さん???ちゃん??」
…返答なし。 静まり返る部屋に玄関のドアが開く音が響
く。
「やっと起きたか~?」 優だ。
しかも一人。
「あれっ、??と??ちゃんは!?」
「あ~??ちゃんが具合悪かったみたいで、 ??が送って行ったで!」
…二人っきり?? でも友達だし。
そんなに意識することもないよね!!
一人で納得をし、 布団に潜り込んだ。
「プリン買って来たから食うか?美嘉プリ ン好きそうやし!」
「食う~っ?プリン大好きぃ!!」
布団から飛び出て、 優からプリンを受け取り夢中で食べる。
プリンを食べながらも 時間が気になる。
優はそれに気付いた。
「時間やばいんか?」
優の言葉に プリンを食べる手を止めて頷いた。
「俺が美嘉の親に電話したるか?」
「…どうにかする!!」
「俺んち泊まってもええからな!」 さりげない優の言葉に
心臓の鼓動は早まる。
今帰れば 怒られるのは確かだ。
今日は お父さんが休みの日。
お母さんは外泊を許可してくれるが、 お父さんは厳しい。
娘を心配する気持ちはよくわかるけど…。 怒られるのは気分がいいものではないか
ら。
携帯電話を取り出し、 無心のまま中学からの親友???に電話をか けた。
???????
『はいは~い?』 こんなに元気だと
言いにくい。
『久しぶりぃ~お願いがあるんだけど……』
『どうしたぁ?!』
『今日???の家に泊まることにしてもらっ ていいかなぁ…??』
『ん?!ok?そのかわり今度おごりね?美嘉 の家に電話しておくね~!』
『恩にきります!!』
???と美嘉の両親は 仲が良い。
だから???の家に泊まると言えば、 外泊許可してもらえた。
美嘉も???のことを信頼しているから、
だからこそ頼むことができるんだ。
「大丈夫やった?」
優は電話を切った美嘉の表情を 探るように見つめる。
「友達が家に電話してくれるってぇ?泊ま っていいの??」
「全然かまへんで!」
テーブルに寄り掛かり再びプリンを食べ始 めた。
待てよ…。 ??、
もしかしてわざと二人にしたんじゃない の??
??も????も???も?????も美嘉と優をくっつ けたがっているし…。
優はすごくやさしいし気が合うし大人だし お兄ちゃんみたい。
優も美嘉のことを 妹みたいにかわいがってくれている。
でも… もし優が美嘉の過去を知ったらひくよね。
それに 美嘉は今でもヒロが…。 ヒロのことが…。
「爆睡しとったな~」
優の声で考え込んで心ここにあらずだった 美嘉は意識を取り戻した。
「…まさか寝顔見てないでしょうねっ!?」
「バッチリ見たで~。ヨダレ流しとった!」
「ギャ~最低~!!」
「痛っ!冗談やって!」
立ちひざを立てながら頭をポカポカ叩く美 嘉の手を優がおさえ…
その瞬間、 目が合った二人の動きが止まった。
さっきまでとは違う空気の中で 時計の針の音だけが静かに響いている。
心臓の音が聞こえてしまいそうなくらいに 響き、その振動で体が小刻みに震えている。