にはしゃぐ??の後ろで、 盗み聞きしていた人。
それは…
「優さんの大学に行くの?俺も行く!」
…???だ。 どうやら内容を聞かれてしまったらしい。
???に聞かれたと言うことは…
「私も行きたい~?」
「俺も~」 やはり????と?????にも聞かれていたみた
いだ。
「じゃあみんなで行っちゃう~!?」
半ばヤケ気味。 でもみんなで行ったほうが楽しいし!!
放課後 ??の化粧直しが終わり
列になって学校を出る。
「あの白い車優さんじゃねぇ?」 ?????が叫ぶとみんなはその車に
一斉に駆け寄った。
運転席から降りみんなの姿を見て 微笑ましい顔をする優。
「なんで全員集合しとんねん!」
「優さん美嘉と付き合ったんだよね?おめ でとうございまーす?私達も大学行きた~ い!」
ぴょんぴょん飛び跳ねる????の問いに 優は美嘉の頭に手を乗せながら答えた。
「ありがとな!みんな車乗り~もちろん美 嘉は助手席なぁ」
今にも冷やかしてきそうなみんなの表情。 でももう冷やかされるのは嫌じゃない。
その時 視線の先に見てしまった
優の体の向こう側でこっちをじっと見てい る影。
懐かしい ヒロの姿…。
ヒロが こっちを見ている。
……一瞬目が合う二人。 隣にいた??も
ヒロの存在に気付いたみたいだ。
「美嘉と優さんはラブラブなんだからぁ?」 わざとらしく
大声で叫ぶ??。
きっとヒロに 聞こえるように…。
その言葉が聞こえたか聞こえないかはわか らないが、 ヒロは少し寂しそうに微笑んだように見え た。
思わず 目をそらす。
玄関から出て来た????がヒロのもとへと駆 け寄り
二人は手を繋いで歩いてゆく。
美嘉を心配するがゆえの??の行動。 それはわかってる。
でも…??が叫んだ瞬間、
“今の言葉、聞かれてませんように”
そう 願ってしまったんだ。
彼氏が出来たこと ヒロに知られたくなかった。
中途半端で ズルくい考え。 重い気持ち。
膨らむ優への 罪悪感。
「どないした?」
「…あっ、ぼーっとしてたぁ!!」 優の言葉で我に返る。
今は心の中で謝ることしかできない。
……ごめんなさい。
ヒロが一瞬見せた寂しげな微笑みは、 気のせいだよね。
もう戻らない足音に耳を澄ませるのは やめたんだ。
助手席に乗り込み 車は大学へと向かった。
大学へ向かう間の車内はサークルの話で盛 り上がっていた。
「優さん何のサークル入ってるんす か~?」
?????が黒ぶち眼鏡の奥にある目を輝かせ て
興味津々に聞く。
「いろいろやで~!」
「例えばなんすか!?」 更に深く突っ込む???。
優が 話してくれた内容…
優が入っているサークルは三つ。 一つ目は
“二輪サークル”
バイクでツーリングをしたり 旅行したりするらしい。
優がバイクの免許持っているなんて初耳 だ。
二つ目は
“旅行サークル”
夏にはキャンプを、 冬にはスノボをしたりいろんな場所に旅行 に行くらしい。
三つ目は
“飲みサークル”
名前のまま ただ飲んで騒ぐらしい。
他の大学の人とも 飲んだりするんだとか。
高校はもちろんお酒はダメだし、 部活と言えばサッカーだとか野球だとか吹 奏楽だとか…
聞き慣れたものばかり。
優の話を聞いて、 新しい世界を知ったような気がして胸が踊 った。
今から旅行サークルの集まりに連れて行っ てくれるみたい。
昨日飲んだのも旅行サークルのメンバー で、 三つのサークルの中で一番仲がいいんだっ て!!
「着いたで!」
大きな駐車場に 車をとめる。
車を降りて真っ直ぐな道を少し歩いたとこ ろで
大学が見えてきた。
広くて大きくて 綺麗な校舎。
たくさんの人の 楽しそうな笑い声。
高校とは全くの別世界。 制服の自分が
すごく浮いている。
だって、 歩いてる人は大人っぽい人ばかりで…。
そんなに歳が離れているわけではないの に、 自分が子供のように思えて恥ずかしかっ た。
「さっそく部室連れてったるわ!」 みんなは慣れない校舎にきょろきょろしな
がら優の後をついて行く。
大学から少し離れた場所にある三階建ての 古い建物に入り、 階段を二階までのぼると優は一つのドアの 前で立ち止まった。
“旅行サークル” そう書かれた紙が
ドアに貼り付けてある。
優はドアに手をかけ、 ゆっくりと開いた。
「こんちわ~!」
「あ~優じゃん?」
「久しぶり~今日は??ちゃんと一緒じゃな いんだな!」
部屋の中からは たくさんの人の声。
「今日は俺の友達紹介しよう思って連れて 来とんねん!」
手招きする優に気付いてはいながらも、 なかなか中に
入れなかった。
「誰か最初に行って…」 不安でか細い
美嘉の声。
「あたし無理!」
「俺もダメ」
部室に入る順番を 譲り合っていたその時…
「じゃあ俺が行く?」
先頭をきって部室に入っていったのは??? だ。 意外に緊張しない性格だということが判 明。
みんなは???に続き、 ぞろぞろと入る。
「お~制服だ!」
「若~い???」 部室内が騒がしくなる。
「この子が??の彼女やから~」
優が??の肩に手を乗せると、 ??は照れくさそうに苦笑いをした。
そして今度は 美嘉の肩に手を回す。
「そしてこのちっこい子が俺の彼女やで!」
部室内は 激しいブーイングの嵐。
「女子高生の彼女って~ちきしょー」
「うらやましい~」
……女子高生の彼女が うらやましい?!
大学には綺麗なお姉さんがたくさんいる。
そんな人達に囲まれながらどうして優が美 嘉を選んでくれたのか 不思議なくらいなのに。
そんなもんなのかな。
優が美嘉のことを彼女だって紹介してくれ たのがすごく嬉しかった。
みんなに歓迎されながら旅行をした時の写 真を見せてもらっていたその時…
「…美嘉ちゃん?」
背後から声をかけられ 振り返った。
そこにいたのは緊張した面持ちの、 黒くて長い髪が特徴の落ち着いた女の人。
「そうですけど……」 警戒しながら答えると、女の人は安心した
のか顔を崩して笑った。
「私????。20 歳だから美嘉ちゃんより二個 上。優からよく美嘉ちゃんの話聞いてたん だよ。思ってた通りの子だった!」
「……はぁ」 よくわからない状況に、とりあえず返答だ
けはしておく。
「昨日も優達と飲んでたんだよ!」
この言葉で 女の勘が働いた。
この人、 優のことが好きなんだ。
証拠はないけど、 なんとなく…。
「そうですかぁ……」 冷たく答えるのは
ちょっとヤキモキを焼いているから。
それでも女の人…いや、????さんは続けた。
「友達になって?連絡先交換しようよ!」 優の友達だから
断るわけにもいかない。
しぶしぶ携帯電話を取り出し、 連絡先を交換した。
しかし、 ????さんの好きな人が優ではないというこ とを知ったのはかなり後になってからで…
そしてそのことが、 後々大きな事件になることなんて今は知る はずもない。
しばらく部室にいたが、外も暗くなったの で優の車で送ってもらい帰ることにした。
??の家に止まり… ?????の家に止まり… ???の家に止まり… ????の家に止まり… 家の遠い美嘉は最後。
でもいいの!! 優と一緒にいられる時間が長くなるから。
「どうやった?いいやつばっかりやろ!」
ハンドルを握りながら 口を開く優。
「うん!!みんないい人だったぁ。大学って 楽しいねっ?」
今日の楽しかった出来事を思い出し、 車内に響く音楽のリズムを足で取る美嘉。
「じゃあ大学来たらええやんけ!」
優の唐突な言葉に 動きが止まる。
「…………え??」
「俺と一緒の大学に受けたらええやん。そ したら毎日一緒にいれるやろ」
でも でも美嘉は○x音楽専門学校に行くつもり で…
その気持ちは変わらないはずで…
なんの答えも出せぬまま家の前に着いた。
「じゃあまたぁ!!」 車を降りようとドアに手をかけた時、
優は美嘉の手をグイッと引っ張り自分のほ うへと引き寄せ…
そして頬を撫でながら唇にそっとキスを し、 すぐに唇を離し肩に手を回しきつく抱きし めた。
「優…苦しい…どうしたの??」
重苦しい雰囲気の中、 優は抱きしめている腕の力をさらに強め る。
「何かあったん?美嘉今日ずっと上の空や ったから。なんか少し不安になった…」
上の空。 上の空だったかな?
そんなつもりは なかったのに。
きっとその理由は ただ一つ。 ヒロに見られたから。
美嘉の中途半端な気持ちと行動が 優を不安な気持ちにさせてしまった。
優の悲しく小さい鼓動が耳に響く。 その鼓動は
早さを増すばかり。
まるで美嘉の返事をせかしているかのよう に…。
「そんなつもりはなかっの。優ごめん ね……」
優は腕の力を弱め、 ゆっくりと離れた。
「俺もごめんな。ちょっと大人げなかった な!」
そう言った優は 安堵の表情を見せた。
一瞬演技っぽく見えたりもしたけど…。
鼓動の早さが ゆっくりと戻ってく。
車から降りるといつも通りクラクションを 二回鳴らし、
車は去って行った。
車が見えなくなるまで ひらすら手を振る。
それが優に対する小さな罪悪感を少しでも 消し去るための、 唯一の方法だったのかもしれない…。
家に帰り かばんの中から進路調査の紙を取り出し た。
【○x音楽専門学校】 ここに
行くつもりだった。 ここ以外 考えたこと無かった。
今日大学に行って新しい世界を知った。 優と同じ大学もいいかもしれない…
そう思ったりもしてる。
ずっと音楽について学びたいと思っていた のに、こんなにすぐ変わるものなのかな。
本当に音楽を学びたかったから 専門学校を選んだの??
ヒロと約束したから…
その約束を守ろうとしてたんじゃない の??
どこかでヒロと偶然巡り