時聞いていれば… 無理矢理にでも聞いていれば良かったの に…。
「そっかぁ…」 ポツリと答えると
ヒロは真面目な顔で言った。
「…美嘉は 幸せだったか?」
【君は幸せでしたか?】 図書室で書いたメッセージと同じ質問。
あの答えを書いたのは、 ヒロだったのかもしれないね。
「うん。すごい幸せだったよ…」
【とても幸せでした。】 美嘉が言った言葉も、
図書室の返事と全く同じ
ヒロはその答えを聞くと再び微笑み、 美嘉の頭に手をのせた。
「お前は相変わらずチビだな。早く背伸ば せよ」
…いつもの意地悪で強いヒロ。 やっぱり美嘉はいつもの強いヒロが好きだ
よ。
………好きだったよ。
寂しく笑うヒロよりも、強いヒロが…。
「バカヒロっ!!」
心は泣いてるのに なんで笑ってるんだろ
ヒロの足を軽く踏む。
「俺の足を踏むとはいい度胸だな。チビ!」
「ヒロが巨人なの!!」
二人で笑い合っていたその時、 ヒロが右手を差し出した
笑顔は 一瞬にして消える。
もう別れの時間なんだ。
右手を差し出し、 ヒロの手を握った。
「美嘉、絶対幸せになれよ」
「…ヒロもね!!」
最後… 精一杯の笑顔で 繋いだ手を解く。
ヒロは後ろを向き 歩き始めた。
右手をあげ、 振り向かず去ってゆく。
川原で別れた あの日のように…。
ただ一つ あの日と違うこと。 もう一生会えないんだ。
学校はヒロと会えた 唯一の場所。
卒業…
これからヒロが髪形を変えたとしても 誰かと結婚してもどこかへ引越してもわか らない。
“一生会えない” それは大袈裟かもしれないけど…。
もう会えない。 そんな気がするの。
友達も将来も想いも、 一緒にいた頃とはお互い全然変わってしま った。
流れゆく月日が 二人を変えた。
これからは本当にお互い知ることのできな い別々の道を歩んでいくんだ。
ヒロが幸せになれればそれでいいって思っ た。
だけど…ただ傷つくのが怖かっただけなの かもしれないね。
ずっと諦めずに追い掛けるつもりだったの に、 気付けば立ち上がることさえ怖くなってし まって
ヒロにすぐ彼女が出来たから? もう戻れないとわかったから??
そんなの今となれば言い訳にしか聞こえな いね。
後ろを振り返ることは、前に進めなくなる ことだと思っていた。
この三年間を思い出す日がいつか来るだろ う。
でもこれからは後ろを振り返り、 弱かった自分を見つめながらゆっくり前へ 進むよ
走ったりはしない。 ゆっくりと…。
恋してたくさん泣いて、たくさん嫉妬して… あの時流した涙は今思えばすごく痛々しく
て醜かったかもしれない。
でもそんな涙や苦しくて悩む姿さえも、 きっとすごく輝いていたね…。
この三年間で、 確実に強く変わることが出来たよ。
【君は幸せでしたか?】 美嘉はすごくすごくすごく幸せでした。 あなたに会えて、
良かったです。
握手をした手が離れた時 本当は涙がこぼれてしまいそうだった。
だけど泣かなかったよ。 涙でヒロの顔が見えなくなるのが嫌だった
の。
それにもしいつかヒロが美嘉のことをほん の少しだけでも思い出してくれる日が来た ら
泣き顔より笑顔を思い出して欲しかったか ら…。
繋いだ手のぬくもりが、今もまだこんなに 熱い。
ヒロの姿を最後まで見送ることが出来ずに
????達のもとへ走った。
「美嘉よく頑張った。」
「偉いぞ↑↑」
「勇気出して良かったね!」 ?????と???と??が
優しく微笑んでくれる。
「美?嘉?ぁ~よ?く?や?っ?た?ぁ~…」 泣きながら頭を撫でてくれた????。
美嘉も泣きながら????に抱き付いた。
「み?ん?な?あ?り?がと?ぉ?ぉ?」
みんながいてくれて 良かった。
本当に良かった。
落ちついた頃、 溶け残った雪をハンカチに包み目を冷やし ながら歩き始めた。
三年間お世話になった校舎は改めてみると 意外に大きくて古くて…
三年間もいたのに、 そんなことにも気付かなかったんだ。
みんなで校舎に向かって深く頭を下げ校門 を出た
無事に“卒業”
出来たよ。
卒業証書を手に持ったまま、 駅前のカラオケへと向かって歩き出す。
前々から計画していた、“卒業パーティー” の会場だ。
全員カップルで 集まる予定。
…と言っても知らないのは???の彼女だけ。
カラオケに向かう途中、ヒロと二人で行っ た川原の前を通った。
泣きながら自転車こいで 泣きながら思い出の曲を聞いた。
泣きながらこの川原に来て、
泣きながら幸せだった頃の二人を思い出し た日もあった。
そんな日々も、 いつか笑って話せるようになろう…。
人は涙流したぶんだけ強くなるって言うけ ど、
人は悩んだぶんだけ大人になるって言うけ ど、
涙を流したり悩んだりすることができると いう事実が、
大切な過程なんだよね。
??が??ちゃんに電話をかけた。
『さっき学校出て今カラオケ向かってる! うん、あと 10 分くらいで着く~?』
電話を切った??は 満足げな顔で言った。
「??ちゃんと優さんもうカラオケの前にい るってぇ!」
…優… なんとなく後ろめたい気持ちがある。
罪悪感?? 会って普通に接すること出来るかな。 ヒロと話したことは、
言わないほうがいいよね
カラオケの駐車場に ??ちゃんと 優が立っている。
平静を装い、 おずおず優に近づいた。
「卒業おめでと!」 優の笑顔に心が痛む反面
なぜか妙に 心が安らぐ。
「…ありがと!!」 軽くお礼を言い、
みんなはカラオケの中へと入って行った。
自動ドアが開き中に入ろうとした時、 優は美嘉の手を強く引き再び駐車場へと連 れ出した。
「どうしたの??」
困る美嘉をきつく抱きしめる優。 あまりに突然の出来事。
「良かった…美嘉もう来ぇへんかと思った わ…」
「え?ちゃんと来るよ?なんで??」 抱きしめる力が
さらに強まる。
「なんとなくそんな気がしとった。でも来 てくれて良かったわ…」
…あぁ、そっか。 優も不安だったんだ。
美嘉がヒロの所へ行っちゃうかもしれない って
不安だったんだ…。
心配かけてごめんね。 美嘉ね、
ちゃんと戻って来たよ。
優はゆっくり体を離し、ポケットから何か を取り出し顔にあてた。
「…冷たっ!!」 顔にあてたのは
小さい袋に入った氷。
「泣き虫な美嘉のことやから絶対泣いてる と思って用意しといたで。」
「…もう氷溶けてるよぉ!!」
笑いながら氷を顔から離すと、 優はその氷を強引に美嘉の目につけた。
「ちょっと早く買いすぎたんかな。俺せっ かちやから!とりあえず冷やしておきぃ」
カラオケからが出て来た???が二人の姿を 見つけて少し遠くから叫ぶ。
「イチャイチャしてるお二人さん↑突然い なくなったからみんなビックリしてたぜ↑ 受付済ませたから部屋行きますよ?部屋で イチャイチャして下さいな~↑」
優の左側に移動し 優の手を握る。
あえてヒロと握手をしたほうの手で 優の手を握る。
何も知らない優。 罪悪感で胸が痛む美嘉。
二人は別々の気持ちを抱えたまま、 カラオケの部屋へと
向かった。
「俺今から彼女迎えに行ってきま~す↑」 嬉しそうに部屋を出て行く???。
残ったみんなはとりあえず食べ物や飲み物 を
大量に注文する。
例え学校を卒業したとしても制服を着てる ので
お酒まずい。
…仕方ない。 今日はソフトドリンクを頼もう。
まぁ、 お酒が嫌いな美嘉にとってはラッキーだけ ど??
そして話題は ???の彼女の話になる。
「???の彼女ってどんな子なん?」
みんなに問い掛ける優。
「あ~俺も気になってたぁ??」 ??ちゃんも興味津々のようだ。
まぁ美嘉も 気になるけど…。
「私達も見たことないんですよ~でも??? をあそこまでギャル男に変えるんだから、 きっとギャルだと思う!ね、美嘉!」
????が美嘉に 同意を求めた。
「うん、絶対ギャルだよっ!!」 その時タイミングよくドアが開き、
みんなは一斉にツバを飲み込んだ。
とても嬉しそうな???と手を繋ぎながら入 って来たセーラー服の彼女。
「じゃじゃーん!俺の彼女の???ちゃん↑↑」
「???と言います。よろしくお願いします。」
???ちゃんは想像してたギャルとは正反対 で、
色白でほっそりとしたお嬢様系。
清楚で整った顔立ちに、セーラー服がとて も良く似合っている。
前に???が言っていた
「彼女処女だからさ?」 この言葉、
今となっては信頼性がある。
「え~!!めちゃめちゃかわいいし!!」
「???にこんなかわいい彼女が出来るなん て俺は認めねぇぞ!」
ブーイングの嵐だ。 ???はそんなブーイングを無視し、
自慢げに笑っていた。
「???ちゃんてギャル男が好きなの????に そう言ったんでしょ?」
????が不思議そうに 問い掛ける。
???ちゃんは頬を赤らめ ???を気にしながら答えた。
「私ギャル男が好きとかじゃなくて…強く てたくましい男が好きって言ったんです…」
みんなの視線は ???に向けられる。
どう見ても
“強くてたくましい男”には見えないけ ど…。
???はその視線に気付き興奮気味に立ち上 がった
「だって強くてたくましい男と言えば、ギ ャル男だろ?!↑」
全員は首を横に振り ため息をつく。
「俺間違ってる?!↑」 うん。
相当間違ってる。
でもそんなこと… 言えるわけがない。
??が全体を まとめた。
「???と???ちゃん座って~卒業パーティー 始めよぉ?まずは乾杯!グラス持ってぇ~!」
一人一つの グラスを持つ。
「卒業祝いということで…」 優がお祝いの
言葉をかけ…
「「乾杯?」」 声を揃えて
グラスを合わせた。
好きな歌を入れ、 自由に歌う。 順番なんて関係ない。
歌いたい人が歌う。 下手でも気にしない。