書いてくれた
メッセージ。
【美嘉は本当に大好きで大切な親友だよ! これからもずっとずっと末長くヨロシク ね!????
卒業おめでとう。大学でも頑張ろうな! ?? ???
バーカアーホチービ!よく頑張ったな! ??
?
美嘉ぁぁぁ三年間ありがとう!!大学でもよ ろしくねぇ☆??】
????からのメッセージが滲んでいる。
…涙かな??
アルバムをケースにしまい、 大切に大切に抱きしめた
…そういえば。
“メッセージ” って言葉を聞いて思い出したことがある。
立ち上がり、 教室を出た。
「美嘉どこ行くの!?」
「すぐ戻るね!!」
この前マフラーを取りに学校に来た時、 図書室の黒板に書いたあのメッセージ。
なんとなく 気になったんだ。
見に行かなきゃいけないような気がした の。
もう、 あそこに行くことはないから…。
図書室のドアに 手をかける。
遠くの教室や廊下はざわざわしているのに ここだけは静かだ。
なんでだろう 胸がドキドキしている…
?????
ゆっくりと ドアを開けた。
「……眩しい」 窓から差し込む眩しい光に目を閉じる。 黒板にちょうどよく光が当たって、
黒板の文字が見えない。
少しずつ黒板に近寄り、手で眩しい光を覆 った。
【君は幸せでしたか?】 この前書いた
メッセージ。
その下に小さく白いチョークで書かれた文 字。
【とても幸せでした。】 誰が書いたのかはわからない。
ヒロじゃないかもしれない。
だけど書いてある。
“とても幸せでした” そう書いてあるよ…。
??????
チャイムの音が耳に響き体がビクッとす る。
これを書いてくれたのが例えヒロじゃなく ても、それでもいい…。
誰かが答えてくれた。 幸せだと言ってくれた。
それだけで満足なんだ。 黒板の文字を残したまま
図書室を出て教室へと向かった。
「おかえり~!」 その時、
先生が教室に入って来て叫んだ。
「おまえら外に出ろ~もう学校は閉める ぞ!」
マフラーを巻いて、 机の傷や窓から見た景色を目に焼き付け 教室を出た。
廊下…。 友達と楽しそうに笑いながら歩いてる姿
や、 泣きながら廊下の隅にうずくまってる自分 の姿が幻のごとくよみがえる。
そしてその幻も、 すぐに消えてしまった。
階段を一歩一歩三年間を振り返るように降 りる。
もうこの階段を 上がることはない。
お世話になった校舎に感謝をしながら外に 出た。
校門の前にはまだたくさんの生徒が集ま り、
別れを惜しんでいる。
美嘉は??を探していた。 ??とは一年の時だけ同じクラスでいつも??
を含め三人でいた。
クラスが離れてからあまり話しはできなか ったけど、大切な友達だから。
話したい。 人ごみに紛れた??の姿。
「??~!!」
この声は??に届くのか。 ??は美嘉に気付き、
笑顔で走って来た。
「美嘉~卒業おめでとぉ!」
「??ぁぁぁぁおめでとう!!」
「卒業しても遊ぼうね?約束だよ!?」
「うん、??いろいろありがとう…遊ぼう ね!!」
ささいな会話を交わし、手を振って別れた。 ????達のいる場所に戻ろうとしたその時… ?????
走った勢いで 誰かにぶつかる。
「…ごめんなさい!!」 頭を下げ歩き出そうとしたが、
その人はなかなか前をどけてはくれない。
……何?? 邪魔だなぁ。
早く????達のところに行きたいのに。
眉間にしわを寄せて 顔を上げた。
…????だ。 ????には
いい思い出が全くない。
争いを避けるため通り過ぎようとした時、 ????は小声で言った。
「…ごめん」 何を言っているのか
聞こえない。
「……え??」 思わず聞き返すと
????は少し怒ったように言った。
「だから~…いろいろごめんって言ってん の!」
最初は理解出来ずにいたが、 冷静に考えてやって気が付いた。
????は謝ってるんだ。
“ごめん”
????の言ったこの言葉はとてもじゃないけ ど謝ってるようには聞こえなかった。
でも… きっと勇気を出して言ってくれたんだよ ね。
赤ちゃんのこと。 人殺しと言われたことはきっと忘れない。 きっと許せない。
だけど、 もういいんだ。
謝ってくれたから許すとかじゃなくて、 誰だって好きな人のことになると必死にな るのは当たり前だし…。
うまく表現できないけど卒業式だから無礼 講って感じかな??
「元気でね!!」 笑顔で????にそう言って
再び????達のもとへ歩き出した。 ????達の姿が見えた時…
「美嘉!」
誰かに呼ばれた声で振り返る。 今度は????か…。 なかなか目的地に
たどり着けない。
「卒業おめでとさん」
「おめでとっ!!」
「大学行くんだろ?頑張れよ!」
「????は働くんだっけ?お互い頑張ろう ね!!」
????と話していて、 ??のことを思い出した。
「じゃあ俺帰るから…」 帰ろうとする????を
無理矢理引き止める。
「ちょっとここで待ってて!!」 ??のもとへ走り、
??に耳打ちする。
「??!!????あっちで待ってるからちゃんと 話して来なよ!!」
不安な顔をする??。 わかりやすい。
「…え、どうしよう…大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だって!!??、後悔しないように頑 張れ!!」
??は気合いを入れ、 ????がいる場所へと歩き出した。
ようやく目的地である????達のところへ たどり着く。
“後悔しないように頑張れ!!”かぁ。
…美嘉が言える立場じゃないのにね。 人には言えるのに、
どうして自分じゃ出来ないんだろう。
でも、自分が後悔したからこそ友達には後 悔してほしくないんだ。
しばらくして ??が戻って来た。
「最後に話せて…良かったぁ!ありがと う…」
??の表情から不安は消え何かをやりきった 顔をしていた。
校門の前にたくさんいた生徒も 次第に減り始める。
「そろそろ行く??」 今日の卒業パーティーをする予定のカラオ
ケに向かおうと帰り道に目線をやったその 時…
少し遠くに見えた姿。
それはまぎれもなく ヒロの姿。
美嘉はヒロの後ろ姿を見つめながら、 心の中で
“サヨナラ”を告げた。
「行けよ」
背後から聞こえる ?????の声。
「………え??」
「最後なんだぞ?行ってこいよ」 ?????は親指で
ヒロを指さしている。
「優さんには秘密にしといてやるって↑↑」 ???が美嘉の頭を
ポンポンと二回叩く。
「私がカバン持っててあげるからさ!早く 行っておいで!」
????が美嘉の持っていたカバンを強引に奪 った。
「でも……」 勇気が出ない。
一歩が踏み出せない。 意気地なし。
「後悔しないように頑張れ?さっき美嘉が あたしに言ってくれた言葉だよ~!」
??が美嘉の肩を後ろからポンッと押し…
その反動で、 美嘉は走り出した。
まだ雪溶けで少しびちょびちょの地面。 はねた泥水で制服が汚れることも気になら
ない。
必死で走った。 好きだった…
大好きだったあの人のもとへ。
ヒロの背中は、 だんだんと近づく。
ヒロは追い掛けてくる足音に気付いたの か、
足を止めゆっくりと振り返った。
立ち止まり 息切れをする美嘉。
ゆっくり振り向くヒロの顔を見ることが出 来ずにただただ地面を見つめていた。
おそるおそる顔を上げ、ヒロの顔を見る。
太陽の光が眩しくて あまり見えない。
でも、わかる。 微笑んでいるのは わかるんだ…。
「よぉ」
ヒロが先に 沈黙を破った。
「そ…卒業おめでとっ!!」 裏返る声。
全ては緊張のせい。
「…元気か?」 ヒロは微笑んだまま
静かに話す。
「うん!!ヒロは…?」
「俺はまぁまぁだな。」
………沈黙…。
重い時間に耐えられず、美嘉は必死に話題 を探していた。
「今日も帽子かぶってるんだねっ…」 ヒロは帽子をぎゅっと掴み、舌を出して答
えた。
「帽子が俺のマイブームだって言っただ ろ!」
何て声をかけたらいいのかわからず、 言葉に迷っていた時…
ずるい…。
光に照らされた ヒロの笑顔。 あの頃のまま。
美嘉の大好きだった顔。
「美嘉は大学行くんだよな?頑張れよ」 なんで
知ってるんだろう。 ????が言ったのかな??
「うん頑張る!!」
ヒロの卒業後については何も聞かなかっ た。
もし、 もし○x音楽専門学校に行くって聞いたら 後悔してしまうような気がしたから…。
再び沈黙が続く。 空の上で鳥がチチチッと鳴いた時
「あのっ…」
「俺…」
二人は同時に話し始め、声が重なった。
「あ…ヒロから言っていいよ!!」
「美嘉から言え。俺は大したことじゃねぇ から」
ポケットから、
指輪を取り出す。
……ヒロから貰った ペアリング。
いつか返そうと思って 制服のポケットに入れたままだった。
持ってたらヒロのことを思い出してしまい そうだったし、
今美嘉には優がいる。 だから…
指輪を一回ぎゅっと強く握りしめ、 下を向いたままヒロに差し出した。
「これ返すね…」 ヒロの動きは止まり、
何も言わず手の平から指輪を受け取った。
顔を上げてヒロの表情を探るように見る。 ヒロはとても寂しそうに笑っていた。
ヒロにこんな顔させたくなかったけど、
美嘉はクリスマスの日、優を選んだんだ…。 最初に手を離したのは、ヒロだよ?? そんな寂しそうに
笑わないで…
昔みたいにバーカ!って言いながら頭叩い てよ。
お前と別れて正解だったな!って… イヤミ言ってよ。
美嘉が知ってるヒロは そんなふうに強い男だから…。
「……ヒロの話は??」
さっき同時に話し始めた時何か言おうとし たよね??
俺… って言ったよね??
「…なんでもねぇよ。だから気にすんな!」 それ以上聞かなかった。いや…聞けなかっ
た。
聞くのが怖かったし… 聞いても答えてくれない気がしたから。
この