嫌だったよな。ごめん。俺、最低だな…」
「あの時はヒロのこと好きだったから…た だ彼女いたのはショックだったけど嫌じゃ なかったよ」
「今は?嫌いか?」
「今は…少し信用出来ない」
「俺マジ別れた。信用してもらえるよう頑 張っから。俺、美嘉が好きだ。…付き合って ほしい」
返事は決まってる。 考えなくても…
とっくに決まってるんだ
「……うん」
あと一回。 あと一回だけ 信じてみるよ。
ヒロの気持ちを 受け入れた。
心のどこかで、 その言葉を待っていたのかもしれないね。
「メール返せよ!」 ヒロは安心したように目を細めて微笑み、
頭を強く撫でた。
ヒロに初めて会った時はまさか付き合うこ とになるなんて
思ってもいなかった。
きっとこの時から、 美嘉の人生は… 変わってしまったのだろう。
美嘉が過ごすはずだった平凡な人生は、 幕を閉じた。
家に帰り??に報告の電話をかける。 ??も????に告白をして
付き合うことになったらしい。
好きな人と付き合うことが出来た二人のテ ンションはもう最高潮で
寝るのも忘れ 朝まで話していた。
━この日から 二人付き合いは 始まったんだ━
クラスは別だけど 休み時間になるたび廊下で待ち合わせをし て会っていた。
イチャイチャしすぎて 先生に怒られたことも…
??と????カップルと w デートをしたり 毎日が新鮮で
毎日が楽しかった。
しかし… 思いがけない事件が起きた。
第三章 傷み
日曜の夕方
これから ヒロと遊ぶ予定。
用意が早くできたので、ヒロの家に向かう ため
予定より一本早いバスに乗った。
案の定バス停に ヒロの姿はない。
ヒロを驚かせよう… そう思い歩いてヒロの家へと向かおうと近 道を通り、 人通りが少ない薄暗い道を歩いていたその 時…
背後にいた車のドアが開き、 誰が走って来る音が聞こえた。
????ッ
鈍い音と同時に頭に激痛が走る。 視界が真っ白になった
もうろうとした意識の中無理矢理腕を引っ 張られ
スモークがかった白いワゴン車に連れ込ま れる。
…頭がくらくらする
…痛い…何???
手足を強い力でおさえ、洋服を乱暴に剥ぎ 取る
見覚えのない四人の男。
…レイプ。 これはレイプだ。 恐怖の中…
レイプされているという事実だけは把握出
来る。
「…やっ???」 自然と出る叫び声。
一人の男に口を塞がれた
「てめー静かにしねぇと生きて帰さねぇ ぞ」
男は不気味に 微笑んでいる。
…目は笑っていない。 笑みを浮かべながら顔や腹を
ひたすら殴り続ける。
その時
???????? 車内に響く着信音。
この着信音は… ヒロだ。
遅いから心配して 電話くれたんだ。
電話に出て ヒロに助けを求めたい。
しかし二人の男が手足をおさえているため 身動きが出来ない。
着信音は 悲しく鳴り響いていた。
抵抗したら もっと殴られる。
殺されるかも…
恐怖と悲しみの中、 唇を噛み締め じっと耐える。
ヒロと初めて一つになった日… あんなに優しく抱いてくれたのに。 何で今さら思い出してんだろ。
…涙が止まらない。
突然????光る眩しい光。 助けが
来てくれた…??
そんな淡い期待さえ すぐに砕かれてしまった。
ニヤニヤしながら 耳元で呟く男。
「てめぇチクったらわかってるよな?今撮 ってる写真ばらまくからな」
体が身震いする。 さっきの光は
助けなんかじゃない。
カメラの フラッシュだったんだ。
「こんなんでいいだろ」 男達は笑いながら意味深な言葉を発し、 その言葉を合図に
車が動き始めた。
車は 10 分くらい走り、 知らない場所で車から捨てるように降ろさ
れ、
…途方に暮れていた。 震える指で
走り去る車のナンバーを phs にメモする。
暗い場所が怖い。 明るい場所に行きたい…
明かりを求めて近くのコンビニへと歩き始 めた。
でも…
ボロボロに破れて 血のついた洋服。
殴られて腫れた顔。
とてもじゃないけど 人前に出れるような姿ではない。
足を止めコンビニの裏にある白いベンチに 横たわった。
ずっと鳴っているヒロからの電話。 今すぐヒロの声が
聞きたい。
『今どこ?』
『……わかんない』
『わかんないってどうしたんだよ!泣いて んのか?美嘉今どこにいんの?言えよ』
『どっかのコンビニの裏…』
『近くになにある?』
『パチンコ屋がある…』
『今行くから』
電話は一方的に 切られてしまった。
ベンチに横になりながら星を見る。
ヒロに 嫌われちゃうのかな…。
目を閉じてヒロの温もりを思い出そうとし ても
今はさっきの出来事が鮮明に甦って来るだ け。
それから しばらく経ち…
????
自転車のブレーキ音。 起き上がると
少し遠くにはボロボロの美嘉を見て驚いて いるヒロの姿が
ぼんやり見えた。
ヒロは自転車を投げ捨て 美嘉のもとへ駆け寄り 強い力で抱きしめた。
ヒロが来てくれた安心感からか… 子供みたいに声を出して泣きわめく美嘉。
「守ってやれなくてごめん…」 ヒロの怒りと悲しみが
体にひしひしと伝わる。
ヒロの存在に安心した気持ちと ヒロに申し訳ない気持ちが混ざり合い 頭の中はぐちゃぐちゃだ
ヒロは悪くない。
汚れちゃったよ。 ヒロ… 美嘉汚れちゃった。
ヒロの胸の中で一時間くらい泣き続けてい た。
「…落ち着いたか?」
「うん……」
顔を上げる。 真っ直ぐ前を見つめているヒロ。
その表情は悔しげで…。
「俺んち行くぞ。このまま帰せねぇから」
「うん…美嘉のいる場所よくわかったね…」
「俺の愛の力かもな!」
フフッと笑うヒロの笑顔の裏に 悲しさが隠れ見える。
わかってるよ。 無理…してるよね。
ヒロは詳しく聞いてはこなかった。 でも何があったか きっとわかってる。
自転車に乗り、 ヒロの家に到着。
「部屋入って待ってて」
「おじゃまします…」
小声で呟き ヒロの部屋にちょこんと座り込んだ。
混乱している頭を抱え、呆然としていると…
「美嘉ちゃん!」 背後から名前を呼ぶ声に体がビクッとし、
恐る恐る 後ろを振り向いた。
「…??さん」 ??さんとは
ヒロのお姉さんの名前。
ヒロよりも四つ上で、 レディースの番長をしているらしい。
最初会った時はかなり怖かったけれど、 ヒロの家に遊びに来るたび仲良くなって今 じゃ悩みを聞いてもらったり、メールや電 話で連絡をとったりする仲だ。
美嘉にとっても お姉ちゃん的存在。
「びっくりさせてごめんね。弘樹から聞い た。辛かったね。あたしも似たような経験 あるし、女同士のほうが話しやすいよね?」
言葉を返すことが 出来ない。
「あ、無理して話さなくてもいいよ。いつ か話せるようになったら話して?そいつの 特徴とか、車の種類とか。あたしも昔それ
で犯人見つけ出したからさ。美嘉ちゃん傷 つけた犯人、あたしと弘樹で必ず見つけ出 してあげっから!」
??さんの言葉を信じ、 目をギュッと閉じて phs を手に取り 詳しく説明をした。
「白いスモークがかったワゴン車に、ナン バーは 183*。四人の男で 10 代か 20 代…一 人は前歯がかけてたような……」
??さんに傷を手当してもらい、 ヒロに自転車で家まで送ってもらった。
二人の間に会話はない。 でも今ね…
感謝の気持ちでいっぱいなんだ。
どこかもわからない場所を捜しあててくれ て 自転車を投げ捨てて走って抱きしめてくれ た。
ヒロが 安心をくれたんだよ。
ヒロの背中に強くしがみつき、 大好きだと…
実感していた。
家の前に到着し、 ヒロが差し出してくれた手につかまり 自転車から降りる。
「ありがと…じゃあまた明日ね…」 下を向いて帰ろうと背中を向けたその時…
「…待てよ」
美嘉の手を握り 引き止めるヒロ。
終わりを予感させる。
…そんな雰囲気。
もうヒロとは ダメなのかな。 終わりかな。
「…ごめんね」 自然に出た言葉。
ヒロは美嘉の肩を両手でぐいっと掴んだ。
「謝ってんじゃねぇよ。俺美嘉と終わらせ る気ねぇから。こんなことって言ったら言 い方悪いけど、まだ好きな気持ち変わって ないから。これからは俺が美嘉を絶対守る し、今日のことなんて忘れさせてやっから。 犯人捜すから」
涙が溢れた。 今度は嬉し涙だった。 ヒロありがとう。
ただいまも言わず部屋に直行し、 布団に潜り込んだ。
眠れるわけがない。 目を閉じるとあの光景が甦るから。
結局一睡もしないまま
朝を迎えた。
「…いってきます」 転んだと嘘をつき、
目と口の横にバンソウコウを貼り玄関を出 る。
玄関の前には ヒロが立っている。
「え…どうしたの?こんな朝早くに…」
「迎えにきたんだよ!」
「え…なんで??」
「いいから早く乗れ」
ヒロはおでこに軽くキスをすると、 体を持ち上げて
後ろに乗せた。
「掴まってろ!」 ヒロから美嘉の家までは自転車で一時間以
上はかかる距離だ。
ただでさえ学校だから早く起きなきゃなら ないのに…
ヒロ何時に起きたの??
心配してくれたんだ。 優しいね…。
学校へ行くと ??と??は顔の傷を見て 目を見開いた。
「どうしたの?!」
声を揃える二人。
「転んだの!!」
「美嘉ドジなんだから、気をつけなよ!」
「は~い?」 ??の心配をよそに
明るくふるまう。
ヒロはそれから毎日学校から家までの往復 を送り迎えしてくれた。
少しずつ 心の傷が消えていく…。
あの事件以来、 ヒロは気を使っているのかキスしかしてこ ない。
それも ほっぺやおでこに…。
確かにまだ 少し怖い気持ちはある。
ヒロの優しい気持ちは すごく嬉しいよ。