を入れる。
【受信メール 1 件】
震える手で
受信 box を開く。
…地元の友達から。
がっかりしながらふと phs の裏側を見た時 昨日四人でとったプリクラが貼ってあるこ とに気付いた。
この時はもう赤ちゃん動いてなかったのか な。
昨日まであんなに楽しかったのに…。
「もう大丈夫だから、ありがとねっ!!」
??と????にお礼を言い、玄関まで見送った。 二人と入れ違うかのようにお姉ちゃんとお
父さんがお見舞いに来た。
二個上のお姉ちゃんはいつも学校やバイト が
忙しそう。
お姉ちゃんとは姉妹と言うより仲のいい友 達みたいで、 今回の妊娠のことも何度か相談しようと迷 ったけれど結局話せなかった。
お姉ちゃんは美嘉が退屈しないようにと お菓子やマンガを買って来てくれた。
プチ家出をしてしまった手前、 お父さんの顔が見れない
親を裏切ったから バチが当たったのかな。
布団を深くかぶり、 窓のほうを向く美嘉。
お父さんは何も言わずに布団の中から美嘉 の手をそっと取り出し 両手で包むようにして握った。
そっぽを向いていたからわからないけれ ど、
きっと…泣いている。
だってね、 握った手が震えていたから…。
お父さんお母さん 言うこと聞かずに勝手なことしてごめん ね。
お姉ちゃん、 いつも1番に相談してたのに話せなくてご めんね
美嘉が、 美嘉がもっと強かったら肩を押されたくら いでシリモチついたりはしなかったのか な。
赤ちゃん助かったかな…
夜になり面会時間も終わる頃、 お父さんとお母さんとお姉ちゃんは心配そ うな顔をしたまま家へと帰って行った。
ヒロは結局 来なかった。
連絡もない。
ヒロは美嘉がピンチの時に助けに来てくれ る
スーパーマンなのに…。
不安な時はずっと手を繋いでいてくれたよ ね。
おかしいな。
病院の夕食に手をつけず窓の外をじっと眺 めていた。
雪が降っている。 昨日指輪をプレゼントしてくれて、
外でマフラーを巻いてくれたね。
「赤ちゃんに」って 黄色い手袋を買ってくれてた。
昨日の出来事なのに、 昔のことのよう…。
ヒロのことを考えると胸がぎゅっと締め付 けられて、 それと同時にお腹がズキッと痛む。
ヒロ… ヒロに会いたいよ。
いつもの笑顔で
「産んで」って言ってほしいよ。
「大丈夫だから頑張れ」って言ってほし い…。
赤ちゃんはどうなっちゃうの?? 一人じゃ不安だよ…。
ひんやりと冷たい布団にくるまり、 窓の外を見つめながらヒロを待っていた。
気付けば朝。 ベッドの周りに、
昨日は無かったはずのカーテンがかけられ ている
まわりがとても ざわついている。
カーテンを開けて入って来る看護士。
「まわりうるさくてごめんね。みんな今日 手術予定の人達なんだよ!」
そう言って慣れた手つきでお尻に注射を打 ち、
点滴をさしていなくなった。
手術って、 中絶手術??
美嘉… 中絶なんてしたくない。
産みたいよ…。
この病室で産みたいのに産めなくなった人 って、何人いるのかな…??
隣のベッドからは、 カップルの楽しそうな笑い声さえ聞こえて くる。
どうして 笑っていられるの??
一人の命がもうすぐ絶たれようとしてるん だよ?
あんな小さい体で一生懸命生きていて、 いつか明るい光見る事を夢見て頑張ってる
のに…
産めない理由は人それぞれだからしかたな いね。
でも 美嘉は笑えない…。
例えヒロがここにいたとしても笑ってな い。
看護士が 再びカーテンを開けた。
「手術室へ移動しますよ~。」 心の準備が出来ていないまま、
タンカに乗せられる。
枕元に置いておいたヒロからもらった手袋 を持って行こうと手を伸ばしたが、 結局あと少しというところで届かないまま 手術室まで運ばれてしまった。
美嘉は 一人ぼっちだ…。
薄暗い電灯に 手術台を囲む二人の看護士。
手術台に乗せられ、 パンツを脱がされる。
手足をベルトみたいなものできつく固定さ れた。
レイプで手足を押さえ付けられた時の記憶 がよみがえる。
これから始まる手術の不安が押し寄せ、 体は震えていた。
逃げたくても もう逃げられない。
看護士は 腕にチクッと注射を打った。
「目を閉じてゆっくり 3 秒を数えて下さい ね。1‥2‥3」
意識が なくなってゆく…。
夢を見ていた。 ヒロが赤ちゃんを優しく抱いていて、
ヒロも赤ちゃんも幸せそうに笑っている。
美嘉はなぜかそんな二人を遠い場所から 見ていた。
そんな夢…。
眩しい太陽の光で 目が覚める。
気が付くと、 目からは涙がこぼれ落ちていた。
ガバッと勢いよく起き上がろうとしたけれ ど まだ麻酔が切れていなかったようでベッド に倒れこんだ。
「大丈夫?」 お母さんが
美嘉を抱き起こす。
「お母さん…」
「手術無事成功したよ。お父さん仕事でお 姉ちゃん学校あるから…みんな心配してた よ!」
ズキッと痛むお腹。 そう言えば手術して…
それで赤ちゃん…
「お母さん…ヒロは………??」
重い体を支えながら か細い声で小さな望みを託す。
黙り込むお母さん。 それは悲しい結果を表している。
ヒロ…来てくれなかったんだ。 嫌われちゃったかな…。
「もう少しで麻酔さめると思うから、それ まで寝てなさい」
お母さんに優しく布団をかけられ、 そのまま眠りについた。
目が覚めたのは夕方。 麻酔は
すっかり切れている。
服に着替え直し、 病院を出る準備を始めた
まだ少しだけ出血していたので、 トイレに駆け込みパンツにナプキンをつけ る。
お母さんに支えられながら、 看護士に挨拶をして病院を出た。
眩しい夕日に目を 手で覆ったその時…
「……ヒロ」 病院の玄関前に
ヒロが立っている。
「先帰るから何かあったら電話しなさい よ。ちゃんと家に帰っておいで、待ってる からね!」
気をきかせてくれたのかお母さんは帰って 行った
「ヒロ…!!」 痛むお腹をおさえながらヒロがいる場所ま
で走りヒロが着ているコートのそでを強く 引っ張った。
「なんで来てくれなかったの??美嘉一人 で寂しかった…怖かったよ…」
立ち尽くしたまま ヒロの手を握る。
氷のように冷たい。 背伸びをして
ほっぺを両手で触る。
やっぱり冷たい…。 頭にはたくさん雪が積もっている。
「どうしたの?なんでこんなに手もほっぺ も冷たいの??」
ヒロは遠くを見つめながら話し始めた。
「ずっと お祈りしてた…」
「…お祈り??」 右手を前に出し、
グーに握りしめていた指をゆっくり開くヒ ロ。
ヒロが握っていたのは、小さなお守り。
【安産】 と書かれている。
ずっと握っていたのか、ヒロの汗で少しし めっていた。
「ずっと神社でお祈りしてた…俺と美嘉の 赤ちゃんが、助かるように…ずっとお祈りし てた…」
美嘉は その場で泣き崩れた。
我慢していた涙が 一気に溢れ出る。
「ヒロ、もう赤ちゃんはいないの。美嘉の お腹に赤ちゃんはもういないんだよ…」
ヒロの手からは 安産のお守りがポトリと落ちた。
雪の上に座り込む。
もう 赤ちゃんはいない…。
わかってた。 だけど…。
例え生きていなくても… ずっとお腹の中にいて欲しかった。
二人の赤ちゃん。
ずっと一緒に…。 座り込み
美嘉の体を強く抱きしめるヒロ。
落ちた涙が 雪を溶かす。
二人は抱き合ったまま、子供みたいに声を あげて泣いた。
地面に落ちた安産のお守りの上にはいつし か雪が降り積もり、 だんだん見えなくなっていく…。
涙も渇き落ち着いてきた頃…
「やべ…美嘉のコートに鼻水たくさんつい ちゃった」
涙と鼻水でぐじゅぐじゅの顔を見合わせる 二人。
「俺かっこわりぃな」
「ヒロっ鼻水すごいよ!!」
「お前も出てんぞ~鼻水!」
お互いの鼻水を指で拭きながら二人はクス ッと笑い 大粒の雪が降るなか手を繋いで家へと帰っ た。
ヒロとの絆が深くなった…そんな日だった。
それからしばらくは家で安静にして、 ヒロは毎日お菓子を持って会いに来てくれ た。
ヒロのお父さんやお母さんも美嘉の家に来 て、 親同士で話し合いをしているみたいだっ た。
????????ヒロのお姉ちゃんの??さんは毎日 のように連絡をくれる。 心配してくれているのだろう。
流産したことは、 とてもショックで辛くて苦しい…
だけど 家族や友達やそしてヒロがいて良かったと 改めて知ることができたんだ。
手術から 5 日後の
12 月 30 日。
今日は 手術後の検査日。
普通検査は手術から一週間後にするはずな のだが明後日から正月ということもありこ の日にしてもらったのだ。
ヒロと病院へ行った。 受付をして、
診察室に呼ばれ診察台に乗る。
冷たい器具を入れられるのは大分慣れてき た…。
診察台の横にあるモニターを見て、
もう赤ちゃんがいないことを実感する。
診察室に戻り、 医者の言葉を待った。
「異常はないですね。大丈夫です。」 とりあえず
胸を撫でおろす。
「しかし…」
「えっ??」
「もしかしたらこれからは赤ちゃんができ にくいかもしれないですね…」
「………それって…」
「絶対できないわけじゃありません。ただ、 できにくくはなってしまうかもしれません ね…」
「それって流産したからですか?!」
「できる方法はたくさんあります。大丈夫 です。もっと詳しく検査したほうがいいと 思います。明日病院に来てもらえますか?」
「わかりました……」
できにくいって?? もう赤ちゃん できないの??
流産したら次から流産しやすくなるって聞 いたことあるけどそれが原因??
会計をして医者の衝撃的な言葉を思い出し ふらふらしながら帰ろうとした時、 一人の看護士に呼び止められた。
「これね、あなたのお母さんから預かった ものなんだ。お母さんはどうしたらいいか わからなかったみたいでね、私が預かった の。どうしようかなぁと思って…本当は処分 しなきゃならないんだけどどうしてもでき なくて…」
差し出したのは