何期待してるんだろ。
あまり見たことのない顔ぶれの中、 一番後ろの窓側の席には見慣れた顔。
????だ。 ????に近づき
背後から肩を叩いた。
「よ~っ!!」 ????は体をビクッとさせながら振り向く。
「お~。お前もリーダーかよ!似合わねぇ な!」
「????に言われたくないし~!!じゃんけん 負けたんだもん。????もでしょ??」
「正解~?」 おどけて舌を出す????の前の席に座り、
後ろを振り向きひじをついて話し始めた。
「リーダー面倒だよね~!!」 ????は反射的にかわざとなのかはわからな
いが美嘉から目をそらす。
????の様子が おかしい。
「????~??」 ????の顔を覗き込む。
「話あんだけど…」
ヒロのことだと直感。 ????の態度でいい話ではないことがわか る。
「え………何?!」
唾をごくりと 飲み込んだ。
「あのな…」
「ちょちょちょちょちょっと待って!!」 両手で????の口を押さえ言葉を止めた。 聞くのが怖い。
小心者…。
いつもは強がりな自分だけど、 ヒロのことになると弱いんだ…。
「………少し考える」 くるりと前を向き
方向転換。
今????が言おうとしてることは確実にヒロ のことで、 ????の様子を見る限りいい話ではないのは 嫌でもわかる。
聞きたいようで 聞きたくない…。
もしかして 彼女ができたとか??
それは確かに辛いけど…きっともう大丈夫。 だって
慣れちゃったもん。
ちゃんと現実と 向き合おう。
そう決心したと同時に
運悪く先生が教室に入って来た。
「今から注意事項言うからしおりにメモし ろ~」
先生の声は右耳から左耳へと通過し、 覚悟を決め後ろを振り返った。
「……教えて??」 ????は周囲をきょろきょろ見渡し、
美嘉の耳に顔を近づけ小声で話し始めた。
「ヒロ女出来たって。」 予感的中。
平気だと思っていたはずのに実際聞くと頭 が重くなる。
「…マジかぁぁ」 遠い目で窓の外を見ながら答える。
「マジっぽい」
「彼女ここの学校??」
聞きたくないはずなのに勝手に開く口。 ただ一つ祈ること。 違う学校でありますように…。
ヒロが彼女とイチャつく姿を見るのは、 さすがに限界だよ。
????が首を縦に振る行為は、 美嘉の祈りをあっさりと砕いた。
「…いつから??」
ヒロの彼女でもないのになぜかキレたよう な表情を見せる美嘉。
そんな矛盾に気付きながらも ????は何も言わない。
「三日前だってさ」
「……ふ~ん」
くるりと前を向き、 また重苦しい日々が始まることに覚悟を決 めた。
「ヒロの女????らしいんだよな…」 後ろから聞こえたまるで聞き間違いとさえ
思えてしまうその言葉。
動揺を隠しきれず足を机に強くぶつけ鈍い 大きな音をたてた。
「????…????って…」
「俺達のクラスの」
「そこうるさいぞ~ちゃんと聞けよ~。」 先生の注意を無視したまま必死で真相を探
る。
「????とヒロ付き合ってんの…??」
「あぁ。ヒロから告ったらしい…」
「嘘だぁ!!だって????美嘉がまだヒロのこ と好きって知ってるよ??」
沈黙を続ける????を見てその言葉は真実み を帯びた。
ヒロと????が付き合ってる??
三日前から?? 嘘だよ。
だって????ずっとヒロの相談のってくれて たし。
美嘉がヒロに未練あるのも知ってるもん。 さっき教室で話してた時も好きな人いない
って言ってたし。
……付き合ってる?? なんで?? ????と美嘉は
友達だよね??
ヒロからの告白。
????は美嘉から見てもかわいいし性格もい い。
だけどなんで?????? ヒロは????と美嘉が友達なの知ってるよ
ね…??
沸き上がる疑問。 わけもわからず教室を飛び出した。
「待てよ!」
後ろから追い掛けて来た????が美嘉の腕を 掴み引き止める。
「まだそんなにヒロの事が好きなのか?」 見たことのない????の真剣な顔に
思わず目をそらしてしまう。
「まだ…すごい好き…」 自然に頬を流れる涙を見て????が腕を掴む
力を強める。
「なんでそんなに苦しむんだよ!泣くくら い辛いならやめろよ!そんな美嘉見てらん ねぇよ。俺はヒロのかわりにはなれねぇの か?」
????の声が 静かな廊下に響き渡った
????の言葉が 理解出来ない。
今はヒロのことしか 頭に入らないの。
「腕…痛い。離して…」 混乱する頭をかかえその場に座り込むと、
????は掴んでいた手を離した。
「マジだから考えておいて」 ????が残した言葉。
頭も心も ついていかない。
長い廊下の先を見つめながら、 遠くなっていく????の足音に耳を澄ませて いた。
ヒロと????が
付き合ってる。 ????が美嘉を…??
わからない。 何があったか わかりたくない。
この時突き刺さる視線に気付いてはいなか った。
あの人が二人の会話を全て聞いていたこと を…。
リーダーの集まりが終わったのか、 教室からぞろぞろと人が出て来た。
思い立ったように立ち上がり、 ??と????が待つ教室へと向かう。
噂かもしれないし????に聞いてみよう。 友情は
壊したくないから…。
教室のドアを勢いよく開けたが、 二人の姿はない。
「帰っちゃったかな…」 一人で学校を出て
歩き出した。
眩しすぎる夕日が、 悲しみを誘う。
バス停の下、 足元でゴロゴロと懐いている一匹の子猫。
「悩みなくていいね…君になりたいよ…」
お弁当箱に残っていたおかずをあげて 到着したバスに乗り込んだ。
次の日の朝。
「おはよぉ…」 やる気ない態度で
教室のドアを開ける。
「????あっち行こ~」 いつも元気に挨拶をしてくる??から返答は
なく、 ????の手を引いて教室から出ていってしま った。
「……やっぱり」 席につき、
両手で顔をおさえたまま呟く。
制服がまくれ上がって一瞬覗いた????の腕 についていたのは、 ヒロがいつもつけていたブレスレットだっ た。
あのブレスレット、 昔一緒におそろいで買ったやつだよね。 見間違うはずがない。
「ヒロと????が付き合ってるのは本当だっ たんだ……」
??からの返答がなかったことなどすっかり 忘れ、改めて突き付けられた目の前の現実 に心が曇る。
一時間目は体育。
二人は教室に 戻っては来なかった。
一人でジャージに着替え体育館へと向か う。
一人になったことで 二人に避けられているという事実に気付い た。
「今日は男女混合でやるぞ!」 人の輪からはずれ一人ぽつんと体育座りを
する美嘉にとって先生の言葉はかなり痛 い。
遠くにいる????と目が合い、 ????は少し気まずそうに右手を上げたので 美嘉も苦笑いで右手を上げ返した。
????を見て昨日の出来事を思い返す。 ヒロと????のことばかり考えててすっかり 忘れてたけど、
告白された…のかな??
その時、 近くにいた??が聞こえるように口を開い た。
「あ~あ、誰かさんはいいよねぇ~。人の 好きな男奪って普通に学校来れるんだから さ~!」
????も続けて言う。
「最悪だよね。友達だと思ってたのに裏切 られたね!」
やっと避けられてる理由が把握出来た。 昨日の????からの告白…聞かれてたんだ。
????の声 廊下に響いてたし。
??は????のことまだ好きだから、 だから…。
確かに????に告白はされたよ。 だけど、
付き合ったりとかしてるわけじゃないよ。
なのに人の男奪うって、そんな…。 それに????はヒロと付き合ってるんでし
ょ??
????は美嘉が知らないと思ってるんだろう けど、
全部知ってるんだよ。
友達だと思ってたのに 裏切られた…??
こっちのセリフだよ。
あぁ、そっか。 ??は????とヒロが付き合ってるの多分まだ 知らないんだね。
だから????が美嘉に告白したのを聞いて、 嫉妬してるんだ。
友情なんて このくらいで壊れちゃうんだね…。
学校に居たくない。 もう帰りたい。
先生の目を盗み 制服を持って体育館を出た時…
「帰んの?」
息を切らし追い掛けて来たのは????だ。
今????と話してるところを??達に見られた ら
さらにややこしくなってしまう。
美嘉は????を冷ややかな目で見つめ 無言で歩き始めた。
????が悪くないのは わかってるんだ。
ただの八つ当たり…。
「美嘉?」 ????が美嘉のカバンを掴んだ時、
遠くには楽しそうに笑うヒロが見えた。
………ブレスレット してない。
????に あげちゃったんだ。 一緒に選んだのにね。
掴まれたカバンを強く振り払い ジャージと上靴のまま外へ飛び出た。
走って… 走って…
全速力で走った。
何かを求めて足を運んだのは ヒロとの思い出の川原。
ここに来ればさらに辛くなるのはわかって る。
でも 来てしまっていたんだ。
草の上に座り 大声で泣き叫んだ。
誰か 誰か助けて。
????に逃げれば楽になるかもしれない。 でもそれは????と??を傷つけるだけの行為
にすぎない。
神様 もうこれ以上
傷つけないで下さい…。
ヒロと別れてから、 辛くて苦しくて…。
でもね、 出会えて良かったって思ってた。
ヒロに出会えたおかげで少しだけ大人にな れたし
本気で人を好きになる気持ちを知ることが できたんだ。
だけどね、 今出会わなければ良かったのかなと思った りもしてる。
こんなに傷つくくらいなら、 出会わなかったほうが良かったのか な…??
背後から聞こえる足音にもう淡い期待さえ 抱かない悲しい自分。
????の相手がヒロじゃなかったら 笑顔でおめでとう言ってあげれたかな。 二人の幸せ願えたかな。
━夕方 携帯を開くと????からの大量の着信通知。
帰りたくないな…。
近くのコンビニのトイレで制服に着替え、 列車で街に向かった。
人混みの中 意味もなくベンチでボーッとしていた時…
「一人?何してるの?泣いてたの?」 落ち込む美嘉に