いつか聞くね。
「親心配すると思うからそろそろ行くで!」
テーブルの上から 車の鍵を手に取る優。
「はぁい…」 素直に返事をし
部屋を出た。
車に乗り込み大音量で cd をかけ、 音楽に??ながら家へと向かう。
家がもっと遠かったらいいのにー。 そしたらもっと一緒に居られるのに…。
そんな気持ちをあっさりと打ち砕くかのよ うに車は家の前に到着した。
あ~離れたくないなぁ。でもそんなのワガ ママだよね。
でもでも、 やっぱりもう少しだけ一緒にいたいんだ。
一度開いた車のドアを 再び力をいれて閉めた。
「何かあったか?」
「あの…もう少し一緒にいたいなーな~ん て…だめかなぁ??」
優がさりげなく出した小指を、 不思議そうな目で見つめる美嘉。
「ほな、明日から受験勉強頑張るって約束 できるか?」
考える暇もない。 返事は即答。
「…頑張るっ!!」
「約束な!」
初々しさを残し 絡まる二人の小指。
「指切りげんま~ん?」
「…実は俺も離れたくなかったんやけど な!」
優は美嘉の頭に手を乗せ答えを待たずにア クセルを踏み 家から少し離れた場所に車をとめた。
車の座席を倒し 寝そべった状態のまま手を繋ぎながら話を した。
ずっと朝から気になってることがある。 でもかなり聞きにくい。
よしっ、 勇気を出して 聞いてみよう。
「ねぇねぇ、一つ聞いていいかな~…??」 体は真っ直ぐ向いたまま目線だけを優に動
かした
「なんやねん?」
優はこっちを見ず真っ直ぐに上を向いたま ま。
「あのさ、昨日美嘉途中で意識なくしちゃ ったでしょ??優はさ、その…最後まで出来 たのかなぁ~と思って…」
優は大袈裟に咳こみ プイッと窓のほうに顔を向けてしまった。
「な…いきなりなんやねん。恥ずかしいや ん!」
これからすることは、 ちょっとした意地悪。
「答えられないってことは最後まで出来な かったってことだよねぇ…」
両手を目の下にあて泣きマネをする美嘉を 見て
案の定優は少し焦っている様子。
「言わなあかんの?」 優の言葉に負けないくらいの大声で泣きマ
ネを続けると優は観念したみたいだ。
「いや、だから…最後まで出来たで。」
「マジでぇ??良かったぁ?」 泣きマネをやめ笑顔を見せる美嘉を見て、
優は悔しげな表情を見せた。
「泣きマネかい。俺また騙されたわ!」
「聞きたかったんだも~ん?あ~スッキ リ~!」
憎たらしい顔で 舌を出す美嘉。
「はよ帰って勉強せぇ。ア~ホ!」 ムキになる優は
子供みたいでかわいい。
「言われなくても帰りますよぉ~だ!!」 舌を出したまま車から降りドアを強く閉め
て手を振った。
運転席の窓が開き 優が顔を覗かせる。
「勉強頑張れな!」 クラクションを二回鳴らし去って行く車に
向かって手を振った。
「たっだいまぁ~?」 誰が見たって嬉しいことがあったとわかる
くらい超ごきげんで部屋に入りベッドの上 にあるうさぎのぬいぐるみをきつく抱きし めた。
優のことを考え、 一人でニヤケながらミシミシと鳴るベッド の上を意味もなく転がる。
一瞬だけ… 本当に一瞬だけどヒロの顔が頭によぎった んだ。
動きを止め 笑顔が消える。
もう後戻りは出来ない。
だから、 考えても仕方ないね…。
それからは何かが吹っ切れたように 受験勉強に励んだ。
大晦日は優に会いたいけど電話だけで我慢 しなきゃ…。
今は受験勉強に励む。
そして年は明け、 新年だ。
初夢を見た。
ピンク色の手袋をした赤ちゃんが泣いてい る。
「どうしたの??」 聞いても返事はない。 抱いてあげようと手を伸ばしても届かな
い。
『どうして追い掛けなかったの…?』 赤ちゃんは悲しい表情で確かにこう言っ
た。
「ちゃんと行きたい道に進んだよ…」 美嘉の返答に
赤ちゃんの丸い瞳から涙が流れ出た。
『あなたは逃げた。楽なほうに逃げた。ま た辛い思いするのが怖かったんでしょ?』
「違う…違うよ…」
首を横に振って 否定する。
『本当は、本当は公園に戻りたかったんじ ゃないの…?』
何かを必死で訴えようとする赤ちゃん。
「違う、美嘉は優を選んだの。後悔なんて してないよ…」
『どうして…どうして?どうして追い掛け なかったの?どうして話聞いてあげなかっ たの?』
「もうやめて…優を選んだの。そう決めたん だよ…」
赤ちゃんはそのまま暗闇へと吸い込まれる ようにして消えていった。
目が覚めた時には、 なぜか涙が溢れていて…
どうしてこんな夢を見たんだろう。 赤ちゃんは何を言いたかったのだろう。 何を伝えたかったのだろうか…。
━高校三年三学期
…と言っても授業は一週間くらいしかなく て 残すは受験と卒業式くらいなんだけどね。
「おはよ~でぇす?」
「美嘉~おはよん!」
教室のドアを開けたと同時に挨拶を返して くれた????と?????カップルを見ると、 学校に来たと実感する。
「クリスマスどうだった!?」 ????の問いに
前もって用意していた返事で答えた。
「最高だったよん!!」
「お~言うね言うね」
?????? ?????の声と同時に教室のドアが開き、
クラス中がざわめいた。
その原因は…???。 超ギャル男に
大変身している。
「お~っす↑↑」
「?…??」 ????は持っていたペンを床に落とした。
「お、なんか美嘉雰囲気変わったな~↑」
「えっ、そう?????ほどじゃないけどね…」
「何があった?」
?????の問いにかばんから手鏡を取り出し、 髪をサッと整えながら答える???。
「俺彼女できたんだわ↑その子ギャル男好 きみたいでさぁ↑」
この時確実に美嘉と????と?????の 心の声が揃っただろう。
???って
“単純”だったのか…。
呆れた雰囲気の中で 会話は続く。
「彼女ここの学校??」
美嘉の問いに???は親指をたてウィンクし ながら答えた。
「違う学校だぜぇ↑」 語尾を上げ
話し方もギャル男を意識している様子。
「受験する気あんの?」
「バリバリぃ↑」 ????の厳しい口調も???には効かない。
「おはぁ?」 後ろから話に割り込んで来た??。
隣のギャル男が???だとは気付いていない 様子。
「美嘉雰囲気変わった~フェロモン出てる
?」
「だよな俺も思った↑」
横から口を挟む???。 ??は眉をしかめながら???の顔を凝視した。
「…は?????何その髪の色に顔黒。ありえ ない!何が起きたの!?」
「彼女の好みがギャル男らしーよ」 興奮する??に?????は冷静に答えた。
「彼女!?でもその変化はありえないから ぁ!それより美嘉は何かあった?!」
話題は美嘉へと変わる。嫌な予感…。
「確かに大人っぽくなった?もしかして優 さんと…」
????が何を言いたいのか想像はつく。
「やっちゃった!?」 ??からの一声。
やっぱりその話題か…。
「マジで?そこんとこどうなの↑」 髪をいじりながら問い質す???をよそに
返事を考えていた。
待てよ。 いいことを考えた。
「みんなが先に教えてくれたら教え る~!!」
こうすれば みんな犠牲になるから。
最初に口を開いたのは 下ネタ上等の??だ。
「あたし達は毎日してる?でも??ちゃん早 いんのぉ~????ちゃん達は?」
「俺らもだよな~????なんてもう毎日うる さくて…痛っ」
????が?????に 手加減なしでげんこつをする。
「?????なんて口だけだよ!いざとなったら 勇気ないとか言い出すんだもん。まだ未遂
?」
「残念ながらそーゆーこと。???はどうな の?」
???は彼女のことを思い出したのか ニヤッと不気味な笑いを浮かべた。
「彼女経験ねーし手出せねーよ↑↑」 みんなが思ったことは
ただ一つ。
???をここまでギャル男に変えてしまう彼 女は
本当に処女なのだろうか…。
「美嘉は美嘉は~!?」 返事を急ぐ??。
美嘉は親指と人差し指で小さな円を作っ た。
四人はいっきに 盛り上がる。
「マジで!?」
「どうだった!?」 立ち上がるみんなの勢いに圧倒されつつ
も、 両手を使ってハートを作り少し乙女ちっく に
答えてみた。
「超~幸せだったよ?」
「ったく幸せそうな顔しやがって~↑」
そう言いながら 自分も幸せそうな???。
「おめでと??」 ????はお母さんのように頭を撫でてくれ
た。
「みんなカップルだな」 ?????の言葉を聞き
??が一つの提案をする。
「卒業式の日カップルで集まって卒業パー ティーしない?」
「「賛成~?」」 四人の声が揃った。
「とりあえず受験合格だね!」
「勉強頑張ろうぜ~」 現実味を帯びた
????と?????の言葉。
みんなで合格して笑顔で卒業出来たらいい な。
この時あの人が会話を聞いていたことに全 く気付きもしなかった…。
その日の昼休み お弁当を食べるため
席を移動しようとしたその時…
「話せる?」 席を立とうとした美嘉の前に立ちはだかっ
た人…
????だ。
なんで今頃????が…。 ????の腕をちらっと見るとヒロのブレスレ
ットがなくなっている。
……悪い予感。
避けようとしても その場を動こうとはしない????。
「話したいんだ。」
あ~イライラする。 今さら何を話すの?
まさかヒロの恋の相談を聞いてくれとでも 言うわけ??
「…話すことなんかないし。どけて!!」
強気な美嘉の言い方に、 ????の顔色が
赤くなった。
「何よその態度。私知ってるんだからね。 美嘉が弘樹の子ども中絶したの知ってるん だから!」
教室中に響き渡る ????の声。
その声にクラス中が 静まり返る。
「え…なんでそれ…」 ????は顔をさらに真っ赤にして
怒りで震えながら叫び続ける。
「弘樹から聞いたんだから。中絶なんて最 低だよ!私なら絶対産むよ!人殺しのくせ に!」
「え…ちょっと待っ…」
「さっき聞いてたんだから。新しい彼氏と もヤリまくってんでしょ?男好きだね!」