「転んじゃったぁ !!!!!??ドジだからさ ぁ~!!!!!あははははぁ???」
??の手を引いて起こし、 体についた雪をはらう。
そして手を繋ぎながら再びベンチへと向か った。
「??本当に怪我ない??大丈夫??」
「平気だっちゃ~!!!美嘉はお姉ちゃんみた いなりねぇ ?? ??よりおチビちゃんなのに ぃ~!!!!」
「うるさいって!!」
美嘉は熱いコーヒーを??のほっぺにくっつ けた。
「熱っ!!!!!!!!!あちちちちちち!!!!」
「ざま~みろぉ~?うけけけけ」
??はなんとなくほっとけないと言うか…
いつも元気なのがたまに無理してんのかな って思う時もある。
なんとなく美嘉に似ていて、 強情っ張りな感じがして…
??の弱音とか聞いたことないし…。 だからなんとなく心配なんだ。
「美嘉は??のマブダチ~??????」 白い息を吐きながら問い掛ける??。
「な~に今さら!!当たり前っしょ?いきな りどうしたの??」
??は何も答えずに自分の左手の薬指にはめ た指輪を取り、 コーヒーの中にポチャンと落とした。
「??何やってんの!?」 ??の手から缶コーヒーを強引に奪い、
雪の上に缶の中のコーヒーを出して指輪を 探す。
指輪はコーヒーが全部なくなってから最後 にポトンと雪の上に落ちた。
雪は冷たいけど、
コーヒーに包まれていた指輪はほんのり熱 をもっている。
その指輪を拾い、 ??に差し出した。
「ほら、大切な指輪でしょ…??」 ??は首を横に振り、
指輪を受け取ろうとはしない。
そして笑顔のまま話し続けた。
「もうダメかもしれないなりぃ~!!!!!!!!」 ??が彼氏となんかあったのだと悟り、
美嘉は隣に腰を降ろした
「彼氏となんかあったの…??」
??は声を出さずに何度も頷く。
「…何があったの??」 ??は上を向き、
降っていた雪がちょうど目に入って痛そう な顔をした。
そしてすぐ笑顔に戻り、口を開いた。
「??ね~彼氏との赤ちゃん中絶しちゃった のだぁ!!!!!!!!」
美嘉は缶コーヒーを握りしめながら、 唾を飲み込んだ。
「…中絶??」
「うん!!!!!!!しかも二回してるなりぃ~!!!!」 明るく話す??。
無理してるのが痛いくらいに伝わってく る。
??は早口のまま話し続けた。
「一回目は、高校卒業したと同時に出来ち ゃって~仕事の都合とかあるから堕ろせっ て言われちゃったなりぃ!!!!!でも次は必ず 産もうねって言ってくれたのだ~!!!」
今は中途半端な言葉をかけてしまいそう。 最後まで聞かなきゃ。
「二回目は~今年の夏に海に行った時にお 腹にいたんだぁ~!!!!??は産むつもりだった のにねっ、堕ろせって言われてお金投げつ
けられちゃったぁ!!!!!堕ろさないと別れる って~??ダーリン超好きだから~中絶選ん だなりぃ!!!!!」
「??…」
「でもしかたないよねえ!!!!!??ダーリンが 好きだからぁ~別れたくなかったしぃ~っ て感じ!!」
さっき転んだ時に頭に乗った雪が溶け始め て??の頬を流れ その雫が涙のように見えた。
「ダーリンそれから冷たいんだっちゃ~!!!! 電話あんまり出てくれないし~困ったって 感ぢなり!!!!!!」
「??…でも…」
??は美嘉が言おうとすることをわざと聞こ うとせずに、
話し続ける。
「男なんて~妊娠する前は産もうとか言う けど~実際出来たら堕ろせだもん。参っち ゃうねぇ!!!!!!まぁ、男なんてみんなそうだよ ね~!!!!!中絶したカップルは幸せになれる わけないってやつぅ!?!?」
??、 それは違う。
男がみんなそうなんじゃないよ。
美嘉だって赤ちゃんを… だけど、
二人とも幸せだったよ。
でも、
それを言えずにいた。
美嘉はさっきコーヒーに入れた指輪を??の 手の平に置き、 その上からそっと手を握った。
「??、もう我慢しないでいいんだよ…笑わな くていいんだよっ…」
??の笑顔は一瞬にして消える。 重なった手の上に、
一粒の雫がこぼれ落ちた
「??…??ね、本当は産みたかったなりぃ…」
「そうだよね…」
「もぅ、ダーリンとはダメみたいなりよぉ… 大好きだけど…もう別れるって決めたなり よぉ…」
入学式の時初めて??に出会った時、
自分と同じオーラみたいなのを感じてい た。
うまくは言えないけど、似たような道を歩 んで来たような…
大好きな人の赤ちゃんを産みたいって思う 気持ちはみんな同じだよね。
流産してしまったとしても中絶しなければ いけない理由があったとしても
赤ちゃんを想うその姿は一人の女の子では なく、もう一人の立派な母親なんだ。
男がみんな中絶を望んでいるわけじゃな
い。
一緒に喜んでくれて、
一緒に希望を持って隣で歩んでくれる人は 必ずいる。
??にはそーゆー人に出会って欲しいよ…。
重なった手は、 ??の目から流れる雫で濡れている。
雪がしんしんと降り、 頭に積もり始めた頃…
??は突然立ち上がり、 持っていた指輪を遠くへ投げ捨てた。
「??ぁ…」
「あぁ~、なんかスッキリしたなりぃ!!!!!!!」 その顔は、
何かをやりとげたような…そんな顔に見え た。
ラッピングを開け、
買ったばかりの緑のマフラーを美嘉の首に 巻きつける??。
「やっぱりこのマフラーは美嘉に超似合う って感ぢ~!!????本当は美嘉にプレゼント するために買ったなりぃ??」
「ありがと…」
??は美嘉の返事を聞くとそのまま笑顔で走 り去ってしまった。
二人の距離が遠くなった時、
??は美嘉のほうを振り向き大きな声で叫ん だ。
「美嘉~聞いてくれてありがとなり!!!!!!!! スッキリしただっちゃ?美嘉は??のマブダ チなりよぉ!!!!!!!」
見えなくる??の姿。
美嘉の手は、 ??の涙でまだほんのり温かい。
力になる言葉をかけてあげることが出来な くて
ごめんね。
でも話したことで少しでもスッキリしたな ら、
それでいいのかな。
??が指輪を投げ捨てた時 やりとげたような顔をしてた。
それは嘘じゃないから…
??がいなくなったのを確認し、
雪の中から??が投げ捨てた指輪を探し始め た。
いつか??にもっと大切な人が出来てその人 との赤ちゃんを産んだ時、 指輪を渡してあげたい。
余計なお世話かもしれない。
だけど過去と向き合って生きていくこと は、
大切なことだと思うんだ…。
なかなか見つからない指輪。 降り続ける雪…
たった一本の外灯。
見つからないかもしれないよ…。 でも必ず見つけてみせる
指輪を探し始めてから二時間が経った時…
「あった~!!」 人目も気にせず
大声で叫ぶ。
あった! ??の指輪見つかった!!
指輪についた雪をはらい
雪が積もっているベンチに気にせず腰をか けた。
「あった~!!良かったぁぁぁ~…」 指輪を指先でつまみ外灯へかざしてみる。
??が幸せそうに左手の薬指につけた指輪を 見せびらかす光景が目に浮かんだ。
大好きな人と別れるのは辛いよね。
生きていれば一度はその辛さを体験すると 思う。
でもそれを乗り越えた時 初めて“未練”は
“思い出“に変わるの。
それには長い時間やたくさんの努力や勇気 が必要だけど…
前に進めない人は絶対にいない。
乗り越えられない人の前に壁はたたないん だよ。
神様は乗り越えられる人の前にしか壁を作 らないの。
だからもし壁が出来て立ち止まってしまっ た時は
絶対に乗り越えられるんだ。
そう考えたら、 怖くないよ。
頑張れるよね。
…なんて、 美嘉が言える立場じゃないね。
美嘉もたくさんの友達や大切な人に出会っ て気付いたんだ。
いつかまた目の前に壁が立ったとしたら 壊してでも乗り越えてみせる。
しんしんと降る雪の向こう側に、 三年前の光景を見た。
ファミレスで赤ちゃんが出来たと報告した 時、
突然席を立ち上がりいなくなって…
やっぱりダメかと思って不安になりうつむ いていたら、
突然目の前に戻って来た
そしてお菓子の入った赤くてちっちゃいブ
ーツを差し出して、
嬉しそうに、 幸せそうにあなたは言ったんだ。
「やったじゃん!産もうってか産め!」
どんなに裏切られたとしても どんなに嫌われても
一生会うことはなくても お互いを忘れてしまう日が来ても…
赤ちゃんを産んで欲しいって言ってくれ た。
一瞬でも美嘉のお腹の中に、 二人の夢の中に赤ちゃんはいました…。
それはこれからもずっとずっと消えること のない真実…。
第十九章 迷路
「ジングルベ~ルジングルベ~ル鈴が~鳴 る?」
━12 月 24 日 クリスマスイブ
今年は例年より雪が多いみたい。
折り紙を細長く切り、
それを丸く折ってノリで張り付けたのをい くつも繋げて天井に飾る。
やっぱりパーティーなんだからそれなりに 飾り付けしなきゃね!!
まぁ、
パーティーって言っても二人でなんだけ ど…。
「美嘉~もうツリーに星乗せてええか?」
「ダメ~!!美嘉がやるの~!!」
昨日二人で買った大きなもみの木。 ライトを飾り付けて、
残るは1番上に乗せるメインの星。
「あら!?届かない…」
「ったく~しゃ~ないわぁ!」
もみの木の1番上に手が届かなかった美嘉 の体を優が後ろから持ち上げ、
無事に星は飾られた。
部屋の電気を消してライトを点灯させてみ る。
「うわぁ~キレイ!!」
色とりどりのライトがピカピカと点灯して いて
とてもキレイだ。
まるで昔優と見た夜景のように…。
「まぁ後はパーティー始まってからのお楽 しみやな!」
部屋の電気をつける優。
「はぁ~~い」 美嘉は唇を尖らせた。
今年も優は美嘉の手作り料理を希望。
…って言っても、
同棲を始めてから何回も料理を作ってるか らそれほどかしこまって作るわけじゃない けど。
去年は失敗しないかドキドキしていて、
前日に徹