たみたい…。
「あれ!?美嘉どうしたの~?」
??が大袈裟な言い方で 美嘉の腕を掴む。
ヒロを選んだことを、 後悔して泣いてるんじゃない。
優を傷つけてしまったこと。 そのことに心が痛むの…
ただ涙を流す美嘉に ?????が落ち着いた声で問い掛けた。
「美嘉何かあったんだろ?顔見たらわかる よ。」
やっぱり顔に出てたんだ
一生懸命笑顔作ってたつもりだったのに な。
もう 言うしかないよね…。
「別れちゃった…」 持っていたスプーンを皿の上に置く。
沈黙…。
「別れた~!?」 ??と????と???が立ち上がり沈黙を破った。
二人は美嘉に攻め寄る。
その瞬間
テーブルに置いてあったコップが床に落 ち、
激しい音をたてて割れた
「みんな落ち着いて聞こうぜ。」 さすがは?????。
?????の一声で 立ち上がった二人は腰を降ろす。
「で、なななななんで別れたんだよ。」
煙草を吸いながら話す???にまだ動揺が見 える。
「美嘉から?!優さんから?!」 興奮する??。
美嘉は力なく答えた。
「美嘉から…」
????が美嘉の顔をじっと見つめている。
そしてテーブルに肘をつけながら口を開い た。
「別れた理由は?喧嘩とかぐらいじゃ二人 は別れたりはしないよね。私優さんと美嘉 を見てきたからわかるよ」
美嘉はうつむき、 目を強く閉じた。
「優より好きな人がいて…その人を選んだ の。」
相手がヒロだって事。 ヒロが癌だと言うことは言わない。
反対されるような気がしたから。 美嘉が決めた道、 否定されたくないの…。
「戻る気はないのか?」 ?????の問い掛けに、
美嘉はゆっくり頷いた。
気まずい雰囲気の中、 立ち上がり美嘉の胸倉を掴んで叫ぶ???。
「お前勝手すぎるよ!好きなやつが出来た からさっさと乗り換えるなんてありえねー よ。優さんがどれだけ美嘉のこと好きだっ たか知ってんのか?マジで見損なったわ」
そして美嘉を強く睨み、昼食を残したまま どこかに行ってしまった。
掴んでいた胸倉を突然離されたので、 フラついてそのまま床に座り込んだ。
状況を理解出来ずに ア然とする美嘉。
上からは嫌な視線を感じる。
床に座り込んでいる美嘉を見下しているの は??だ
「本当に最低だよ!美嘉ってそんな軽い子 だったんだね!」
かばんを手に取り、
??も???に続いてどこかに走り去ってしま った。
沸き上がる怒り。 不快感。
確かに言わなかった美嘉も悪い。 だけどね、
ヒロが病気のこと。
たくさん悩んだこと。 優が背中押してくれたこと。 何も知らないじゃん… 話を聞こうともしてくれないし。
でも、
二人が言っていたことは間違ってないよ ね。
美嘉は 最低だから。
優が美嘉をどれだけ好きでいてくれたかな んて、
美嘉が1番知ってるよ…
そんな優を裏切り、 離してしまったんだもん
それですぐ違う男の所に行くんだから、 軽いって言われてもしかたないよね。
見損なわれても、 しかたないんだよね…。
「…大丈夫?」
そう言って手を差し出してくれたのは???? だ。
「とりあえず座って話そうぜ。」
?????が床に散らばったコップの破片を拾 いながら落ち着きを払って言った
とりあえず椅子に座る。
…沈黙。 ????と?????の目線が痛い
三人とも話をどうやって切り出すか考えて いるのだろう。
「ちゃんと話すね。」 沈黙を破り、
美嘉が口を開く。
????と?????の返事を待たないまま話し続 けた。
「あのね、好きな人って元彼なんだ…」
口をあけてあんぐりする露骨な二人。 そりゃあそうだろう。
二人にとってヒロは
美嘉と別れて美嘉の友達と付き合った最低
な男でしかないのだから。
「元彼今病気で入院してて…病気って言っ ても死ぬとかそんなんじゃなくて癌なんだ けど…」
“癌”
と言う単語を聞いて????が机に手をつき立 ち上がった。
「癌…大丈夫なの?!」
「うん。調べたら早期発見なら助かる率は 高いし…本人も元気だから大丈夫だよ!!」
「それならいいけど…」 ????はわかりやすく安心した顔をして
再び座った。
「でも、病気だから元彼を選んだんじゃな いの。ずっと考えて元彼に対する気持ちが 大きかったことに気付いちゃった…」
再び沈黙が続く。
さっきまで出ていたはずの涙もすでに止ま り、
沈黙に耐えきれずに ハンバーグカレーの残りを食べ始めた。
「美嘉は後悔してないのか?」 突然の?????の問いに
美嘉はキッパリと答えた
「うん、してない!!」
「きっと辛くなると思うぞ?」
「わかってる…」
長い時間無言だった????が二人の会話を聞 いて、美嘉の顔をじっと見つめながら言っ た。
「美嘉は元彼が好きなんだよね?」
大きく頷く美嘉。
「大好きなんだよね?」
「…うん!!」
顔を近付け、 ニッコリと微笑む????。
「好きならいいじゃん。後悔してないなら いいよ!美嘉が決めたことだもん。私は美 嘉を応援するよ!ね、??????」
????が?????に同意を求めると、 ?????は軽く頷いた。
あのね、 都合のいい話かもしれない。
だけど????と?????は そう言ってくれるような気がしたんだ…。
「でも美嘉優のこと傷つけちゃったん
だ~…最低だよね!!ブスのくせに調子乗る な~って感じだよね!!」
わざと明るく振る舞い自分の頭をペシッと 叩くと
????が美嘉の右のほっぺを?????が左のほ っぺをぎゅっと引っ張り、 怒ったように言った。
「自分を下げるようなこと言うなっつー の」
「そうだよ。優柔不断の美嘉が答えだした んだから私は偉いと思うよ!」
「?????…???…」
本当は
“?????、????”と言いたかったのだ。
しかし両方のほっぺをつねられていたせい で
言葉がうまく言えない。
それを聞いた????と?????は同時に吹き出 した。
美嘉も つられて笑ってしまう。
「美嘉、息抜きしながら頑張るんだよ!私 で良かったらいつでも大学に飛んでくるか ら?」
「授業も出ろよ!」
二人からの激励の言葉に気持ちがようやく 落ち着き始める。
??と???にも ちゃんと言わなきゃ…。
例え反対されても、 決意が変わらなかったらそれでいいよね。
「????、?????ありがとう。美嘉これから病 院行ってくるね…」
二人に見送られながら学食を出ると、 遠くに??の姿を見つけた
ヒロの事を ちゃんと説明するいい機会かもしれない。
美嘉は??に駆け寄った。
「??!!」 ??はぷいっとそっぽを向いて
歩き始める。
そんな??を後ろから追い掛けて引き止め た。
「??…話聞いて??」 ??は美嘉の手を強く振り払い
横目で睨みつけた。
「ってか美嘉がそんな人だと思ってなかっ た!」
歩き続ける??を 必死で引き止める。
「??…あのね…」
??は美嘉を突き放し、 再び歩き始めたので 遠くなる??に向かって 大声で叫んだ。
「…好きな人ってヒロなの!!」
??は足を止め、 ゆっくり振り返る。
近寄ろうとしたが、
振り返った??の顔があまりに恐ろしかった ので
足を止めた。
深呼吸をし、 落ち着いて話し始めた。
「あのねヒロ実はね…」 ??は美嘉の言葉を最後まで聞かずに
こっちへ向かって歩いてきた。
その時… ?????
鈍い音が響く。
??はの平手打ちが 美嘉のほっぺに直撃。
寒さで感覚があまりなかったほっぺも、
少しずつ叩かれた痛みがあらわれてきた。
「美嘉も所詮??ちゃんと同じ人間だったん だね」
??ちゃんは??と付き合ってるにも関わら ず、
元カノの????さんが好きだった。
そして最終的に選んだのは????さんだっ た。
優と付き合っていたのに最終的に元彼のヒ ロを選んだ美嘉は、 ??ちゃんと同じだと思ったのだろう。
確かに美嘉は??ちゃんと同じかもしれな い。
もしかしたらそれよりも…
きっと優と自分を重ね合わせたんだ。
「??、あのね…」 ??は美嘉の話を聞こうとせずに叫んだ。
「なんでヒロ君なの!?あんな最低な男の どこがいいの!?あんな男選ぶなんて信じ られない!」
????… 美嘉の手の平は
気付けば??の頬を強く叩いていた。
叩いた手のひらが、 じんじんしている。
でもね、 今は友達だからこそ全部知って欲しいの。
「痛ぁ~!何すんの!?偉そうに二人の男 選んでる美嘉が悪いんじゃん!優さん傷つ けたくせに」
確かに、 確かにそうだよ。
美嘉は最低だよ。 そんなの自分が1番よくわかってるよ。
でもね、 ヒロの悪口は言わないで
ヒロは何も悪くないの。 ヒロは何も悪くないんだから…。 ヒロが病気だってことを知れば、
反対されるかもしれない
だけど“頑張ってね”
って言ってもらえるかも…みたいなズルイ 気持ちもちょっとあったのかな
ヒロが病気なのを理由にして、
優ではなくヒロを選んだことを許してもら おうとしてた気持ちも 少なからずあったのかもしれない。
でも
優を離しヒロを選んだ事実は変わりないん だよね
それは最低だよ。 やっぱり最低だよ。
最初は反対されるのが嫌で言わないつもり だった
一緒にいろいろ乗り越えて来た仲間だか ら、
知って欲しかったんだ。
「時にはね、すごくすごく大切なものを捨 ててまでも守らなきゃいけないものだって あるよ…」
??に捨てゼリフを吐き、学校を出た。
??がちゃんと話を聞いてくれなかったか ら、
腹が立ったのかもしれない。
??に言われたことが図星だったから、 八つ当たりしたのかもしれない。
この時以来、
ヒロが癌であることを誰にも言わないと決 めた。
知ってるのは、 家族と??