ッと 出した
それを見たヒロは突然ベッドの横にある積 み重なったみかんキャラメルの1番上に置 いてあった箱を手に取り、
キャラメルがまだいくつか入っているのを 確認して一粒を美嘉に手渡してきた。
「キャラメル食べたいの??」
美嘉はキャラメルの袋を取りながら問う と、
ヒロは表情を変えずに淡々と答えた。
「…食いたくなった」
いつもなら唇に挟んで食べさせてあげてる けど…
今日は????がいるから
さすがに口移しをしたら恥ずかしいか な??
そう思いキャラメルを手でつまみながらヒ ロに食べさせてあげようとする
しかしヒロはキャラメルを食べようとはし ない。
仕方なく唇に挟みいつものようにヒロの唇 へ運ぶと、
ヒロは繋いだ手をぎゅっと握りおいしそう にキャラメルを噛んでいた。
握った手から伝わって来るヒロの気持ち。
…ヤキモキ、嫉妬。
きっと高校時代に美嘉と????がキスしたこ とをまだ少し根に持っていて、
????にわざと二人の仲良しぶりを見せ付け ているんだ…。
「ってかお前らなんか結婚式みたいじゃ ね?!」
????が大声で言う。 なんだか演技くさい。
「そぉ??」 話題の変化に少しだけ焦り、
しかも????の言葉の意味をあまり理解する ことが出来ないまま、 曖昧な返事をしてしまった。
????は何かを大発見したような顔をして手 を叩き再び大声で言った。
「そーだ!お前ら結婚式しちゃえば?ちょ うど着物とスーツだし!」
あぁ
????は二人が着物とスーツ姿だから結婚式 の衣装みたいだって言いたかったんだ!!
「どぉする??」
美嘉はヒロの顔を覗き込むとヒロは微笑ん だ。
「いいんじゃねぇ」
????はそんな二人を見ながらぺらぺらと早 口で話し続ける。
「プチ結婚式やろうぜ?俺進行すっから!」 ????の強引さは相変わらずだ。
でもこうして三人でいると本当に高校時代 に戻ったような錯覚に陥ってしまう。
「でも用意とかしてないよ??」
「どうにかなるから心配すんなって!」
????は美嘉の肩をポンと叩いたと同時に、 ヒロのほうをちらっと見た。
その瞬間に二人がニヤリと笑ったのを見逃 しはしなかった。
「じゃあ始めるぞ!」 ????の進行でプチ結婚式は始まる。
ヒロはベッドに座ったままで、
美嘉はベッドの横にある椅子に腰をかけな がらお互い両手を握り合った。
窓の外からは車の音や歩いている人の声が 微かに聞こえる。
????は何回か咳ばらいをし、 ネクタイを右手で整えながら口を開いた。
「え~桜井弘樹さん。あなたは田原美嘉さ んを一生愛していくことを近います か~?」
ヒロの顔をちらっと見ると、
少し照れくさそうな顔をして目をそらして 答えた
「誓います。」
樹さんを一生愛していくことを誓います か?」
その答え。 その答えは決まっている
迷いはない。
「…誓います!!」 美嘉は病室に響く元気な声で答えた。
「じゃあ誓いのキスをしてくださ~い?」
その言葉に二人は顔を見合わせ、
そして一瞬唇が触れるか触れないかくらい の軽いキスをした。
そのままおでこをくっつけながらお互い小 さな声で誓い合う…。
“これからもずーっと一緒だよ。よろしく ね”
そしてまた????の進行を待っていた。
「じゃあ次は指輪交換して下さ~い?」 ????の言葉。
キョトンとする美嘉。
指輪交換? 指輪なんて持ってないし…。 どうすればいいんだろう
その瞬間繋いでいた手が離れた。
「じゃあ~田原美嘉さん。あなたは桜井弘
「美嘉、左手出せ」
ヒロの声で美嘉の思考は停止。 言われるがままに左手を差し出す。
するとヒロは美嘉の左手の薬指にするりと 指輪をはめた。
そう、
それは高校一年生のクリスマスの日にヒロ がプレゼントしてくれたペアリング…。
ヒロの左手の薬指にもいつの間にか指輪が つけられている。
「俺が退院したら籍入れような!」
「え?この指輪ずっと持っててくれてた の…?」
ヒロは質問に答えないまま美嘉に問う。
「返事は?」 美嘉は指輪をじっと見つめながら答えた。
「…うん!!」
????が指を口にあて、 ピーピーと音を鳴らす。
「よっ、ご両人?本当の式には呼べよ!」
驚きのあまり、 言葉が出なかった。
この指輪…
卒業式の日に美嘉がヒロに返してからずっ と持っててくれてたの??
またこの指輪をつけることが出来るんだ ね。
退院したら一生一緒に暮らしていけるんだ ね。
「????、これ頼んでいいか?」
ヒロはベッドの横にある引き出しの中から 前に美嘉が買ったインスタントカメラを取 り出し
????に手渡した。
「あったり前だぜ?」 ????はそれを受け取り
カメラを二人に向けた。
美嘉とヒロは指輪が見えるように左手を顔 の横に出しポーズをとる。
しかし????はレンズを覗きながらもなかな か撮る気配はない。
「????撮らないの??」
一旦左手を降ろすと????はレンズから目を 離して言った。
「高校の時に俺が言ってたやつ覚えて る?」
しばらく考えてみた。 高校の時に????が言ってたこと…??
たくさんありすぎてわからない。
「ヒロわかる??」 隣にいたヒロに問う。
「なんとなくな!」
ヒロは美嘉の髪についてたかんざしを指で いじりながら答えた。
「ま、いーや。多分聞けばわかるから!じ ゃあ撮るぞ~?」
そして再びカメラを二人に向けたので左手 を顔の横に出しポーズをすると
????はシャッターに指をあてながら言っ た。
「この先何があっても~?」
…高校の学校祭で美嘉とヒロと????と??が カメラマンに写真を撮ってもらった時、 ????が決めたあの言葉。
あの言葉。
「だ~い好き!」
「だ~い好き!!」
二人が声を揃えた瞬間、
パシャという音と共にフラッシュが光っ た。
「お前らよく覚えてんなぁ~!」
????が感心した表情でレンズから目を離 す。
「記憶力いいからね~余裕だも~ん??」
撮られる直前まで思い出せなかったくせ に、
偉そうに言ってしまった
「????、ありがとな。」
ヒロが????に軽く頭を下げている。 高校時代なら信じられない光景だ。
「水くせぇ~よ!気にすんなって!」
????は困ったように頭をかきながらヒロに カメラを返した。
「????ありがとねっ?」 美嘉もヒロに続けて????に頭を下げる。
「じゃあ俺は帰るからな。仲良くしろよ!」 ????はそう言い残し、
さっさと病室を出て行ってしまった。
きっと感謝されることに慣れてないんだろ う。
「あら…????帰っちゃったね!!」
「あいつシャイだな」
「でも????ってキューピッドだよね!!あの 日????がヒロの家から電話かけて来なかっ たら多分ヒロと仲良くなってなかった し!!」
「あいつには感謝だな」
????に感謝しながらベッドの上に置かれた インスタントカメラを手に取り、 持ち上げてカメラの残り枚数を見てみた。
この前まで残り 26 枚あったのが、 なぜか 20 枚になっている
さっき????は一枚しか撮ってなかったし…。
不思議そうにカメラを見つめていると
ヒロはそのカメラを奪い棚にしまってしま った。
「カメラの残り枚数さぁ…」 疑問を口に出そうとしたその時、
ヒロは美嘉の言葉をわざと遮るようにして 話し始めた。
「実は今日プチ結婚式やんの????と計画し てたんだよな!」
疑問は消え、
今度はヒロの言った言葉を理解することに 励む。
「計画??」
「そう。昨日メールで連絡取って計画立て てたんだわ!」
さっきヒロと????が目を合わせてニヤリと 笑った理由…
そーゆーことか。
「あ~なんか怪しかったもん!!」
「マジ?でもこーゆー機会じゃねぇと俺ス
ーツ着れねぇからさ」
病室が沈黙になった瞬間
頭の中でカメラの残り枚数が減っていたと いう疑問がよみがえった。
でもヒロが焦ったようにカメラを棚に隠 し、
わざとらしく話を遮ったことを考えると聞 かないほうがいいような気がして…
まぁ、
残り枚数なんてそんなに重大なことでもな いか。
問い質すことはとりあえずやめよう。 現像したらわかるし!!
美嘉はヒロのひざに頭を乗せ、 甘えたように頭をゴロゴロ移動させた。
「ねぇヒロ~覚えてるぅ??」
「ん?何がだ?」
「昔さぁ~ヒロが
“いつか写真を見ながらこの時も楽しかっ たけど今はこの時よりもっと幸せだね~っ て言えたらいいね“って言ってたじゃ ん??覚えてる??」
「おー」
「ヒロが今持ってるカメラを現像してその 写真が出来たら、その写真見て“この時も 楽しかったけど今のほうが幸せだね”って 言おうねっ??」
“言おうな!” 期待していたヒロからの返事はなかった。
ただセットされた髪形を崩さないよう、 優しく髪を撫でてくれた
この時初めて、 いつもとは違う不安が 美嘉の心の奥に 生まれたんだ。
「じゃあまた?」
「玄関まで送るか?」
「寝てなさいっ!!」
着崩れしてしまった着物を手でおさえなが ら病院を出た。
夕暮れの空に手をかざす
ヒロから貰ったペアリングに夕日があたっ て
目をそらしてしまいそうなくらいに輝いて いる。
ヒロと別れた後、 唯一の繋がりは指輪だった。
phs から携帯に変えて連絡が取れなくな り、
お互い新しい相手が出来て会うこともなく なって…
制服のポケットに入った指輪だけが、 ヒロと繋がっていたの。
卒業式に指輪をヒロに返した時、 本当にもう終わったんだと思った。
もうヒロと会うこともないんだなぁ…って。 でもね、
その指輪が今薬指で光ってるの。
もうポケットの中じゃない。 薬指で光ってるんだよ。
運命ってあるのかもしれないね。 大切な人を傷つけてしまったけれど…。
神様は意地悪ばっかりする。
だけどこんな美嘉にもたまには味方をして くれているのかもしれない。
「退院したら籍入れような!」 ヒロの言葉を思い出し、
顔がニンマリしてしまう