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恋空 佚名 4595 字 3个月前

ロまた突然いなくなったりしないよ ね??」

ヒロの顔を 見ることが出来ない。

…困ってる?? こんな質問迷惑かな??

でもね、 安心が欲しいの。

もう離れないって…

ずっとずっとそばに居てくれるって証拠が 欲しい

言葉が欲しい。

それが例え嘘だとしてもそれでもいい。 叶わなくても…

今すぐに 言葉が欲しいんだ。

ヒロは美嘉の体をゆっくり離し、

前髪を掻き分けあらわになったおでこを指 で軽く弾くと

再びきつく抱き寄せた。

「バーカ。おめぇみてーな甘えん坊で泣き 虫で寂しがりやな女、俺じゃねぇと付き合 えねーよ!」

ぶっきらぼうで乱暴で意地悪な言い方だけ ど、

でも安心をくれている。

“離れないよ”って… 言葉と鼓動で

伝わったよ…。

「あれ?言い返さねぇの?つまんねーな!」 こんな言葉も、

今はただの照れ隠しだってことぐらい わかってる。

「あっかんベー!!」 ヒロに向けて舌を出すと

ヒロは子供のようなあどけない笑顔で 笑っていた。

「じゃあそろそろ帰ろっか??風邪引いた ら困るしね!!」

図書室の匂いを忘れないようにと大きく深 呼吸をした時、 一瞬風とともに微かに運ばれたあの香り。

美嘉がクリスマスにヒロにプレゼントし

た、 スカルプチャーの 香水の…。

「ヒロもしかして香水つけてる!?」

興奮したように胸に顔を埋めながら聞く と、

ヒロはげんこつで美嘉の頭をコツンと叩い た。

「気付くの遅ぇし!」 この香り、

そしてこの場所。

これはまさに 高校時代そのもの。

…胸が痛いのに なぜか温かい。

再び過去の想いに ふけり始める。

「もう出るぞ!」

ヒロの現実じみた言葉に微妙な想いを巡ら せたまま図書室を出た。

「この廊下で手繋いで歩いたよなー」 廊下を歩きながら

しみじみと言うヒロ。

そして美嘉が二?三年生を過ごした教室に 顔を覗かせた。

「ここでよく????とかみんなで集まってた よな。楽しかったな」

一つ一つをゆっくり思い出そうとするかの ように

二人は校舎全体をぐるぐると回った。 美嘉はね

この校舎でヒロとの楽しかった日々を たくさん思い出すことが出来るよ。

でもね 辛いことも… たくさんあった。

ヒロに新しく彼女が出来た時とか、 すごい苦しかったの。

そーゆー思い出もこの校舎には確かにあ る。

でもね、

その時ヒロがどんな気持ちだったのかと思 うと

今胸が締め付けられるんだ…。

「ごめんね……」 突然謝りたくなってしまった。

「なんで謝んの?」 不思議そうな顔をするヒロ。

「別にぃ~!!」

唇を尖らしておどけたように言うとヒロは 何かを感じ取ったのか、

こう答えた。

「意味わかんねぇ!…俺もごめんな」

「ヒロはなんで謝ってるの~??」

さっきヒロが美嘉に聞いたことと全く同じ ことを聞き返すと、

ヒロも美嘉のマネをして唇を尖らせながら おどけたように答えた。

「別になんでもねぇ!」 二人は大きな声で笑い合い、

そのまま駐輪場へ向かい再び自転車に乗っ て走り出した。

自転車に乗り校舎を後にした二人の後ろ姿 は、

現在と過去の影が重なり

よりいっそう輝きを 増していたんだ…。

もう家に帰るのかと思っていたのに、 自転車は家とは反対の道へ進む。

「ねぇ~またどっか行くの??」 声が届くように叫ぶと、

ヒロは自転車を漕いでいるのにも関わらず 後ろを振り向きながら答えた。

「さっき行ったのは俺らが出会った場所。 じゃあ次は?わかるだろ」

「あ~危ない !!ちゃんと前見て運転し て!!」

「おぅ~!」

ヒロが後ろを向いたことが気になってあま り返事を聞いていなかったけど

なんとなく所々の単語だけは覚えている。

確かさっき行ったのは出会った場所だから 次は…みたいなこと言ってたよね??

さっき行ったのは 出会った場所。

つまり学校。

じゃあ次は別れた場所? つまり川原かな??

予想は的中。 自転車は川原へと

到着した。

川原に咲いていた花はもうほとんど 枯れてしまっている。

でも何本かは かろうじて残っていた。

チョロチョロと流れる川のせせらぎが、 昔と変わらず心を癒してくれる。

「降りようぜ」 手を引かれながら坂道を降り

草の上に座った。

風は強いけど 今日は快晴。

陽射しの強さに上を向くことが出来ないく らいだ

「ヒロ寒くない?大丈夫??」

ヒロの顔を心配そうに覗き込むと、 ヒロは後ろに回り美嘉の体に手を回した。

「大丈夫。こうすれば寒くねーよ!」

触れるヒロの体が美嘉を包んでくれて温か い。

上着よりもカイロよりも1番温かい…。

昔見た夢。

暗闇の中から美嘉を明るい所まで導いてく れたあの大きな手は、

…きっとヒロだった。

今日の朝早くに作った手作り弁当を袋から 取り出し、

弁当箱を????と開けた。

自転車で揺れてしまったせいか、 おかずが左側に寄ってしまっている。

その中から卵焼きを箸でつまみ、 ヒロの口の中に運んだ。

「どう?どう??」

「うめぇ!生きてて良かった~って感じだ わ」

「大袈裟すぎるし!!」

ミニトマトを自分の口に運ぼうと箸でつま んだ時

ヒロが咳ばらいをして何かを話し始めよう としたのでミニトマトを弁当箱に戻し耳を 傾けた。

「早く雪降んねぇかな」

「雪??」

「ここに雪降ったらどんな景色になるか見 てみてぇ」

冬に一度 ここに来たことがある。

優とヒロを選ばなきゃならない時… 一人でここに来た。

冬の川原はね、

花は咲かないし川の水も凍って流れたり流 れなかったりして…

春とか夏とか秋のほうがずっとずっと 綺麗なんだよ。

…でもね 言わない。

別れてからここに来たのを知られたくな い。

それにあの時は一人だったから…

二人だったら綺麗に思えるかもしれないか ら。

「じゃあ~雪が降ったらまたここに二人で 来よう??」

またいつものように返事を濁されてしまう

だろう。

でもきっとヒロはこの言葉が欲しくてそう 言ったんだと思うんだ。

「そうだな。二人で来ような!」 ヒロの答えは

意外だった。

またヒロとここに来ることが出来るんだ…。 何度夢見ただろう。

嬉しい気持ちのまま再びプチトマトを箸で つまんだその時…

ヒロが後ろから抱きしめる手の力を強め た。

その瞬間プチトマトが箸から落ちコロコロ と地面を転がり、

ポチャンと音をたてて川の水とともに流さ れる。

「ヒロ…??」

何も答えずただただ抱きしめる力を強める ヒロ。

「どうしたの…??」

様子がおかしい。 心なしかヒロの体が 震えている。

「俺、まだ死にたくねぇよ…」

か細いヒロの声。 頭の中が

真っ白になる。

言葉が 理解出来ない。 理解したくない。

「え…」

「もっと美嘉と一緒に過ごして…これから もずっと…いろんなことして笑っていきて ぇよ…」

「ヒロ…」

「赤ちゃんと三人で手繋いでそんでまたこ こに来てぇんだよ…ただそれだけなのにな んで…」

強く握り合ったその手からは、

ヒロの気持ちがひしひしと伝わってくる よ。

痛いくらいに… 伝わっている。

“死にたくない”

“死にたくない”

“死にたくない”

頭の中は、

なんか固い物で殴られたような…そんな感 覚。

悪性リンパ腫。 心に封印していた言葉が一気に飛び出す。

本当は不安で 毎日毎日不安で…。

平気フリをしていた。

ヒロが元気だったから、ヒロがこんなに苦 しんでるとは

思わなかったから…。

重い現実が 二人の目の前を横切る。

癌と言う名の… 悪性リンパ腫と言う名の悪魔が、

今二人の間に現実として襲い掛かって来て いた。

心情とは正反対に、

川は??????と優しい音をたてて流れてい る。

ヒロの弱音を聞いたのは今日が初めてだっ た。

今まで平気そうな顔して不安は口に出した りしなかったのに…。

本当はずっと不安で心細くて、 寂しかったんだね。

だってヒロはすごい相手とと闘ってるも ん。

ずっと闘ってきたもん。

いくら喧嘩が強くて負けたことのないヒロ だからって、

癌。 こんな強い相手と闘ってたら弱音も吐きた

くなるよ…。

ずっと我慢して 偉かったね。

偉かったね。

「ねぇヒロ…」

後ろを振り向こうとするとヒロは強い口調 で言った。

「こっち見んな」 ヒロの言葉に従い

真っ直ぐ前を向いて川の流れを目で追う。

「ヒロは死なない…死んだりしない…死な せない。生きる…絶対に…」

ヒロは何も答えず繋いだ手を離し、 強く強く抱き締めた。

抱きしめられているはずなのに、 ヒロが遠くに感じる。

ヒロの目から流れ出る雫が卵焼きの上に ぽつぽつと落ちた。

抱きしめる腕があまりに細くて… 今ヒロが闘っている病気の恐ろしさを この時改めて

…実感したんだ。

卵焼きを指でつまみ、 口へと運ぶ。

あれ?? なんでだろ。 しょっぱい…。

あぁ、ヒロの涙か。 ヒロが頑張ってる証。 ヒロが生きたいって 強く想ってる証。

美嘉は泣かない。

ヒロがいつか死ぬかもしれないと言う現実 を

認めたくないから。

美嘉が泣いたらヒロはもっと不安になるか ら。

だから泣かない。 頑張るの。

「ヒロ…???は??」

ヒロは美嘉の言葉を聞きあごを指でぐいっ と寄せ

わざとチュッと音を鳴らすようにキスをし た。

「もっともっとたくさんして?」

今は何も考えず ただただお互いを求め合いたいんだ。

それは逃げかもしれない

今日が終わればちゃんと先のことを考える

から… 今だけは何もかも忘れて愛し合いたいの。

二人は何度も キスをした。

ヒロの唇は温かくて… 優しくて…。

向かい合った状態で座り 二人は無我夢中で唇を重ね合わせた。

ヒロの手が 背中をさする。