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恋空 佚名 4586 字 3个月前

そうな顔で夢を語り始めた。

「俺が赤ちゃんを肩車して…美嘉と手繋い で歩くのもいいな。毎日仕事帰って来て美 嘉がいて赤ちゃんがいて…そんなの最高だ な」

話し疲れてしまったのか声のトーンが 下がっていく。

ヒロの夢を最後まで聞き終えると、 小さめの声で言った。

「大丈夫。二人の夢絶対叶えようね!!ヒロ 疲れたでしょ??横になったほうがいい よ!!」

ヒロを無理矢理寝かし 布団をかけると、

ヒロは布団から手を出しみかんキャラメル の箱を手に取り一粒のキャラメルを美嘉に

差し出した。

「キャラメル食べたいの??」

「…今食いたくなった」

手袋をした手でキャラメルの袋を取ってい ると、

ヒロは布団をかぶったまま窓のほうを向い て話し始めた。

「…俺お前に出会う前まではマジどーでも いい人生送ってた」

かすれて消えてしまいそうなくらい小さな 声。

それでも一生懸命話し続けようとするヒロ の言葉に、

キャラメルの袋を取る手を止めて耳を傾け た。

今はどんなにささいな音でさえも、

ヒロの声を消してしまうような気がしたか ら…。

「お前に出会う前は女いても浮気しまくっ てたし夢とかなかった。だけどお前に出会 って…マジでヤキモキ焼いたりとか不安に なったりとかした」

「……うん」

「最初はこんなに好きになると思ってなく て、ぶっちゃけ落とそうくらいにしか考え てなかった。でも一緒に過ごしてだんだん 本気になって…」

「ん……」

「お前に出会ってなかったらきっと今頃寂 しい人間になってた。誰かのために生きた いとか絶対思わなかったし…俺は美嘉に出 会えてマジで良かった。本当にありがとな」

ヒロが…

ヒロがなんで突然こんなことを言ったのか はわからない。

覚えているのは、 ヒロの目に涙がたまっていたこと。 ただそれだけ…。

「美嘉もヒロに出会って成長出来たよ!!出 会えて良かった。ありがとう…ずっと一緒だ よね?」

ヒロは美嘉の問いに答えてはくれなかっ た。

ただ大きくて細い手の平で頭を何度も何度 も撫でていてくれたんだ。

寂しい笑顔で…。

キャラメルを途中まで開けていたことを思 い出し

唇に挟んでヒロの唇へと運ぶ。

一瞬だけ 二人の唇が触れ合う…。

この瞬間が好き。 愛が伝わり合う瞬間。

?おいしい??」 美嘉の問いにヒロは

キャラメルを噛みながら答えた。

「おぅ、美嘉から元気もらえた。俺明日か らまた頑張れる」

キャラメルの箱を振ってみると、 音がしない。

昨日まではたくさんあったのに。 今のが最後の一個だったみたい。

「明日もみかんキャラメル買って来る ね!!」

「…おぅ、ありがとな」

ヒロは積み重なったみかんキャラメルの空 き箱をじっと見つめた。

「この空き箱の数は美嘉から元気分けても らった数だな。」

「そうだね!!明日は写真とみかんキャラメ ル…二つのお土産持ってくるからお楽しみ に?」

??? 病室のドアが開く。

「検査の時間ですよ。」

看護士だ。

「じゃあもうそろそろ帰らなきゃね!!」

一旦脱いだ上着を羽織り帰る準備をしてい ると、

ヒロは再び体を起こして壁に寄り掛かっ た。

「ヒロ~寝てなきゃダメだよっ!!」

「俺つえーから心配すんなって」

「そうだね?ヒロ強いもんね!!喧嘩負けた ことないもんね~!!」

「…病気上等だし!」

自慢げなその顔が 子供みたいにかわいい。

ヒロが手招きをしたので 帰ろうとドアの方に歩き出した足を止め、

再びヒロの方へと向かった。

ヒロは美嘉の手から つけていたビニールの手袋をはずす。

そして二人の左手が重なり、 二人の指が絡まった。

最近手袋してたからヒロの手を直に触るの は…

ぬくもりに触れるのは久しぶり。

ヒロの手って こんなに大きくて温かかったんだ。

ヒロは美嘉の手をぐいっと引き寄せ、 ほっぺにキスをした。

触れる程度の 軽いキス。

真っ直ぐに顔を見つめるヒロ。 時間が一瞬止まる。

キスをされたほっぺが ほんのり温かい。 握った手も…。

いつもとは違う雰囲気。

胸の鼓動は 早まるばかり。

ヒロに 聞こえてしまいそうなくらいに…。

繋がった二人の左手。

薬指にはペアリングが 色褪せながらも 輝いている。

たくさん遠回りしたね。でも最後にはお互 い1番来たかった場所に

戻って来たんだ。

今ね

すごく幸せなはずなのになんだかとても胸 が苦しくて…

繋いだ手をこのままずっと離したくないと 思った

……離したくないと 思ったんだ。

「検査しますよー」 再び看護士が

ドアを開けた。

繋いだ手の力が 一瞬強まる。

しかしすぐに解き ヒロは頭を 優しく撫でた。

「ち~び」

さっきとは違う雰囲気。

でもいつもの元気なヒロに戻って良かっ た。

「うるさ~い、ちびじゃないしっ!!」 美嘉は憎たらしい顔で舌を出し、

再びドアのほうへ歩きドアノブに手をかけ た。

「またな!」 後ろから聞こえる

ヒロの声。

「また明日ね!!」 ドアを開き一旦病室の外に出たが、

再び病室に顔を覗かせてみた。

子供のようなあどけない笑顔で必死に手を 振っているヒロ。

手を振り返しながら、 ゆっくりドアを閉めた。

ドアが閉まる間

ヒロはずっと笑顔で手を振ってくれてい た。

外は雨がぽつぽつと降り続けている。

濡れないよう雨を避けながら写真屋に向か って走った。

「明日までに現像出来ますか??」

「大丈夫ですよ。では明日の午前 10 時に取 りに来て下さい。」

家に到着。

濡れた体をタオルで拭きテーブルに置いて あった夕食を食べる。

今日はお姉ちゃんとお父さんは仕事とバイ トでいないみたいなので、 お母さんと二人で生姜焼きを食べていた。

「ヒロ君の体調はどうだい?」 お母さんの問いに、

口に入っていた物を烏龍茶で流し込みなが ら答える。

「風邪引いたみたいで前より少しは元気な いけど…でも元気だよ!!」

「それは良かったね!帽子は完成したのか い?」

「うん、もうすぐ完成なんだぁ!!」

「喜んでくれるといいわね。」

少し忘れかけていた帽子の存在を思い出 し、

心が弾んでしまう。

今日完成させよっと??

明日ヒロに三つのおみやげ渡せる!!

写真に みかんキャラメルに 帽子。

ヒロの嬉しそうな顔が 目に浮かぶよ。

夕食を食べ終え お風呂に入り、

雨で足のしんまで冷えた体をゆっくりゆっ くりと温めた。

お湯につかり、

白湯のミルク風呂を両手ですくいながらヒ ロのことを想っていた。

さっき会ったばっかりなのに… もう会いたいよ。

今すぐ病院に走って行きたいくらいだよ。 口ではうまく言い表すことが出来ないけ

ど…。

すごくすごく 会いたいの。

いつの間にかこんなにも好きになってたん だ。

「あ~~~会いたい会いたい会いたい っ!!」

たまらずに出してしまった大声が

居間に聞こえてしまうんじゃないかってく らいお風呂場に響き渡る。

その言葉と同時に

バシャ?という激しい音をたて立ち上がっ た。

少しのぼせてしまったみたい。

……頭がクラクラする

パジャマに着替えて鏡を見ると ほんのり赤く染まっているほっぺ。

乾いた肌に化粧水をペチペチとつけ、 歯をみがいてから部屋へ向かった。

今日帽子を完成させるつもりだったけど… なんだか今日は疲れちゃって眠い。

完成させるのは明日にしよぉっ…と……

未完成の帽子を横目に、濡れた髪のまま布 団もかぶらず眠りについた。

窓の外で聞こえる 雨の音。

視界がだんだん ぼんやりとしてゆく…。

夢を見た。

真っ暗闇で震えて泣いている自分。

そこに大きな手が現れて震えて泣いている 美嘉の手を引き、

光射す場所まで 連れて行ってくれた。

そこは明るくて…

先が見えない真っ直ぐで長い道が続いてい る。

後ろを振り向けば 闇の世界。 戻ることは出来ない。

何度も見たこの夢。 美嘉を導いてくれる大きな手は誰なのか…。

勇気を出して ゆっくり顔をあげる。

……ヒロ。 やっぱり

ヒロだったんだね。

何度も導いてくれたあの大きな手は、 ヒロだった。

……あれ??

でも赤ちゃんを抱いているのはどうし て??

ピンク色の手袋をした赤ちゃんを抱いてる のは…

どうしてなの??

ヒロは美嘉より少し前を歩き、 振り向いて頭をポンッと叩いた。

「バーカちーび!」 いつもの意地悪そうな

それでもって子供みたいな笑顔。

言い返したくても なぜか言葉が出ない。

ヒロは美嘉の頭に手を乗せたまま、 話し続けた。

「美嘉、好きだよ。」 美嘉も…好きだよ。

そう言いたくても言葉が出ないの。

今すぐ抱き付いてしまいたい。

…でもね、 体が動かない。

「俺はこれから先、美嘉のこと守ってやれ ないかもしれねぇ」

立ち尽くす美嘉。 言葉も出ず、

体も動かず…。

ただ足だけが ガタガタと震えている。

「…俺は先に赤ちゃんの所へ行く。」 そう言って少しずつ離れて行くヒロ。

その瞬間

動かなかった体が何か呪縛が解けたかのよ うに

一気に動き始めた。

震える足、

何度も転びながらヒロと赤ちゃんのもとへ 走る。

しかし追い付かない。 距離は縮まらない…。

「……ヒロ!!」

声も出るようになった。でもヒロに届いて いるのかわからない。

ヒロは、 とても悲しそうな… 悔しそうな顔をした。

「寂しがり屋の美嘉を…泣き虫の美嘉を一 人にさせてごめんな。でもこればかりは俺 もどうしようもできねぇんだよ…」

「ヒロ…行かないで…離れないで……」

追い掛ければ追い掛けるほど遠くなってい く。

スカルプチャーの香りだけが…… 時々フッとするの。

追い付かない。 追い付けない。

ヒロが来るなって言ってるような気がする んだ。

でも… でも…

行かないで。